お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

子育てはうつくしいと

『世界はうつくしいと』(みすず書房)。私が好きな詩人、長田弘さんの詩のタイトルだ。心に潤いが欲しくなると、書棚からこの詩集を取り出し、やおらページをめくる。

長田さんと面識はないが、20年ほど前に一度だけお世話になったことがある。「今日、空を見上げましたか?」で始まる有名な詩『最初の質問』の全文を、新聞に紹介させていただいた。

その時の挿絵…3人の女の子が大木に登り、風に向かって空を仰いでいるシーンは、今も忘れない。当時のイラストレーターが、わが三人娘をイメージして描いてくれた、うつくしい作品だった。

長いコロナ生活からようやく日常に戻りつつある喜びと感謝を神様に伝えた元日の午後、最大震度7の地震が能登半島を襲った。燃える市街地の映像、津波や余震の情報に、13年前の3・11の光景が目に浮かんだ。

2024年の幕明けに、神は何を私たちに伝えようとしているのか…。コートもいらないぽかぽか陽気を喜べない。地球温暖化を進めているのは、ほかでもない私たち人間だ。地震も新型コロナウイルスも無関係ではないだろう。

コロナ禍は働き方や価値観を変えた。命を脅かされる経験を幾度もしている私たちなのに、未だ変われない。阪神・淡路大震災や東日本大震災など、繰り返し大惨事が起きても、どこか他人事でいる。

『世界はうつくしいと』の冒頭の言葉。

ーーうつくしいものの話をしよう。いつからだろう。ふと気がつくと、うつくしいということばを、ためらわず口にすることを、誰もしなくなった。ーー

溢れる情報社会にもまれ、日々慌ただしく過ごしている私たち。子どもとの今しかない時間を捨て、何のために仕事や自分事を優先しているのか。いつから、子どもを育てるという、最も「うつくしいこと」が、消えてしまったのか。

幼い子どもの目に映る「うつくしいもの」をともに見て、感じられる時間は、人生のうちのほんのわずか。子どもは瞬く間に成長し、「うつくしいもの」だけを見ることはなくなってしまうのにだ。

孤育てが大きな社会課題になっている。たった一人で子どもを育てることに苦しんでいる母親が少なくない。だがそれは「孤独」なんかではない。無条件に、永遠に母を愛してくれるわが子が傍にいる。お母さんは孤独であるはずがない。なぜなら子どもは、お母さんを幸せにするために生まれてくるものだから。

すべてのお母さんは、子育てといううつくしい時間を、わが子から与えられている。そろそろ子育ての価値観も、変わっていい時ではないだろうか。

子育てはうつくしいと、言わせてもらいますよ、長田さん。                  (藤本裕子)