お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

失われた「母時間」を取り戻す乾杯!

今年も「乾杯」の季節がやってきた。毎年7月30日は「お母さんが夢に乾杯する日」。1993年のスタートだから、32回目の乾杯となる。今年のテーマは「母時間~ウシナワレタ ハハジカンヲ トリモドス」に決定!

命を宿した瞬間から「母時間」を生きる母親たち。だがその素晴らしい「母時間」を楽しめないお母さんが、少なからずいる。確かに子育て期は、毎日同じことの繰り返しで自分を見失いそうになる。母を経験した人なら誰もが通る道である。だが、もし「母時間」が、この上なく幸せな時間であることに気づいたとしたら…。

ドイツの作家ミヒャエル・エンデが書いた『MOMO』(岩波少年文庫)は、不朽の名作といわれている。

廃墟となった円形劇場に住みついた少女モモ。不思議なことに、モモに話を聞いてもらうと悩みが消えていく。ある日、町に「灰色の男たち」が現れる。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、心が荒んでいく…。

国は異次元の少子化対策を掲げ、社会にはこれでもかというほど便利で魅力的なモノやサービスがある。どれもタイパ(時間対効果)をうたう優れもの。それでも母たちは「子育ては大変。もう子どもを産みたくない」と言う。喫緊の課題である少子化は解決の糸口もつかめず母親たちはますます孤立する。子沢山の時代は貧しく不便だったが「孤育て」なんて言葉は存在していなかった。

4月に施行された「孤独・孤立対策推進法」。経済社会の副産物ともいえるこんなものを、次世代への負の遺産にしてよいのだろうか。

効率を優先し、時間を節約することで、私たちは、人間本来の生き方を忘れ、大切なものを失ってしまう。どれだけの人が、このことに気づいているだろうか…。

50年前に『MOMO』を生み出した作者は、未来を予測し、警鐘を鳴らしたとしか思えない。むしろ子育てという非効率な時間こそが、お母さんの心を最高に豊かにしてくれるものだと。

というわけで、改めて、今年の乾杯テーマは「母時間」。お母さんたちに、①自分が書いた母ゴコロの記事をじっくり読む「母時間」、②文章をきれいにする「母時間」、③一冊の本にまとめる「母時間」、④それを仲間と共有する「母時間」を、楽しんでもらいたい。

乾杯にかこつけて、ただでさえ忙しいお母さんたちの「母時間」を奪おうとしていないかって? そう。灰色の男の正体は、もしかして私なのかもしれない。
(藤本裕子)

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