お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

生きているだけでいい

私は新卒から16.7年、看護師として新生児センターで働いてきました。センターにはリスクを持って生まれてきた赤ちゃん、小さく生まれてきた赤ちゃんがたくさん入院しており、赤ちゃんの看護だけでなく、お母さん達へのケアも必須でした。

新人看護師の私は、小さな命が精一杯生きようとしている姿、その命を祈るように見守るお母さん達の看護が怖くて仕方ありませんでした。

もともと、母が看護師だから。という不純な動機で看護師になった私。新生児センターで働くことが怖くて仕方なくて、いつもいつも一人暮らしの家で泣いていました。

しかし、1年経ち、2年経ち、段々とそこで働いていると、小さな赤ちゃんとお母さん達に励まされ、頑張ろう。こども達が元気に帰れるよう、ちからを尽くそうと思えるようになりました。

働き始めて6年ほど経った頃、健康に生まれて来たけど、感染症にかかり意識をなくした状態で搬送されてきた赤ちゃんがいました。まんまるでかわいい男の子、ご両親は彼の手を握って、目を覚まして。と祈り続けました。

私は彼とご両親のそばにいたい。そう思い、担当でない日も毎日毎日語りかけました。たまに辛いことがあると、返事は返ってこないのだけど、彼にコッソリ愚痴ったこともありました。

お母さんもお父さんも、私のことを受け入れてくださり、たくさんのお話しをして、彼にしてあげたいことをできる限り一緒にしてきました。

闘病から6ヶ月、彼はお空に旅立っていきました。

彼が旅立って13年。私はお母さんのことをずっと覚えていました。元気にしてるだろうか。いつだったか、病院宛てに出してくださった年賀状にお店を開いたことが書いてあったことを思い出しました。

その住所を検索すると、お空に旅立った彼の名前が屋号の食事屋さんをされてある。私はすぐにお母さんに連絡して、お店に向かいました。

連絡すると、覚えてくださっていたけど、いきなり伺ったりしてご迷惑じゃなかっただろうか…考えながらお店の扉を開けると、あの時と変わらないご両親が迎えてくださいました。

「1番会いたかったよ。本当にありがとう」

そう言って、彼がお空に旅立ったあとに私がプレゼントした〝絵本〟を見せてくれたのです。

12.3年前に書いた私の絵。きれいにきれいにとってくださっていて、

「これは私の宝物なんよ」

そう言ってくださいました。
涙が出そうになるのをグッと我慢。たくさんの思い出話しをして、あっという間に時間は過ぎていきました。

「またおいでよ。こどもらも連れてきな」

ご両親の笑顔に見送られ、帰宅する車の中で私は思ったのです。

生きてるだけでいいんだ。完璧じゃなくていいんだ。私は私。胸を張っていい。こども達も、勉強ができなくても、学校に行かなくても、生きてるだけでいい。

13年の時が過ぎた今、命を持って私に教えてくれた彼とご両親に感謝しています。

(投稿に関してご両親に許可を得ております)

10件のコメント

なんて素敵なお話でしょう。
想像しただけで涙があふれてきます。
勇気を出してお店に行ってよかったですね。
本当に、
一番来てほしいお客様だったんだと思います。

プレゼントした絵本って
まさかの自筆だったとはまた驚きです。
宝物をシェアしてくださり、ありがとうございます。

青柳さん

行くか行くまいか、実際にはしばらく悩みました。辛いことなどを蒸し返すことにならないか。など。しかし行ってよかったです!

絵本は当時、こどもたちやご家族、同僚にたくさん書いていました。お母さんの宝物と伺い、本当に嬉しいです。

さとみ

私の息子も早産で新生児(NICU)に入院してました。
その時の看護師の声かけには嬉しい買ったです。毎日ミルクの量の紙は今だに母子手帳ケースに入ってます。
そのおかげで役1ヶ月ほどで退院できました。
椛島さんみたいな看護師さんかいるからこそ、私たち母親は感謝しかないです。

素敵なお話、そこのお店を紹介して欲しいです

山崎さん

お子さん、Nを卒業されたんですね!少し投稿拝見しましたが、大きく育たれて嬉しく思いました。N卒業のお子さんと聞くと、自分が看護していないこども達も「頑張ったね!」という気持ちに勝手になってしまい…^_^ 私もミルクと体重の紙渡していました。

お店、お母様にお尋ねしてまたご紹介させてください!

さとみ

涙が出ました。素敵なお話と絵本もありがとうございます。私も小1の娘が今学校がいやいやで朝から大変です。でもほんと生きているだけでいい、ですね。心に沁みました。ありがとうございます。

西山さん

お互いお疲れ様です(涙)うちは今朝、仕方なく登校していきました。その姿に涙でした。生きてるだけで頑張ってるんだよ。帰宅した娘に伝えようと思います^_^

さとみ

素敵なお話の共有ありがとうございます。
生まれる前は、健康で元気な子を願っていたはずなのに、だんだんと『あれができて欲しい、これが出来たらいいな』と色んな欲が私の中に溢れてきていると気づけました。
本当、生きているだけでいい。気づかせてくださってありがとうございます!!!

半田さん

わかります。私は仕事柄、余計にその感覚が強かったです。とにかく安全に生まれてきてくれたら。と。名前をつけた時、心のキレイな子に。とそれだけ願っていたのに…段々と色々なことを求めてしまったのかもしれません。

生きてるだけで100点。娘に伝えます!^_^

さとみ

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ABOUT US
椛島里美看護教員
福岡県久留米市在住 41歳のワーママ。鬱で休職中。 7歳の小1女子と、5歳の年中男子… それから39歳のおっきな長男(夫)の4人家族です!