私の母はもうこの世にいませんが、今でも「あの時、母がこうしてくれたから今の自分がある」と思うことがいくつもあります。特に感謝している教えは2つです。
1つ目は「順番を考えながら複数のことを同時に進めることの大切さ」です。母は日常の中で繰り返しこの重要性を話しました。身近な例が料理です。小さい頃から料理の絵本をたくさん揃え、実際に作らせてくれた母。何をどう準備し、どの手順で進めれば効率が良いかを学びました。この小さな積み重ねが、その後の私の思考や行動に大きく影響していると実感しています。
2つ目は「環境を与え、繰り返し学ばせることの大切さ」です。母は小学校の教師をしていたため、夏休みには教え子たちが家に遊びに来ることがありました。星が好きで、望遠鏡を持っていた私に母は、「みんなに見せてあげなさい」と言いました。
最初は、うまく星の説明ができませんでしたが、何度も繰り返すうちに、どう話せば興味を持ってもらえるか、どう伝えればわかりやすいかを自然と身につけていきました。この経験は、後に医師や教授として講演をする際、大いに役立ちました。
共通しているのは、母が私を信じ、何度も「試す機会」を与えてくれたことです。
子育て中の皆さんも、お子さんに何を伝え、どう接するか…悩むことがあるかもしれません。でも、何気ない日々の積み重ねがきっと未来につながります。どうか自信を持ってお子さんと向き合ってください。

東海大学教授(医博)
ドゥイブス・サーチ代表医師
高原太郎
2025年3月号
母たちへの一文より
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