「天衣無縫」とは、オーガニックコットンを原料につくられたタオルや雑貨、ベビー用品、衣類を扱うブランド(株式会社新藤)。天女の衣には縫い目がないことから転じており、「細工をした跡がなく、自然に美しくつくられていること」を意味し、企業理念そのものである。2025年3月3日、横浜市にグランドオープンする天衣無縫のコンセプトショップを訪ね、山本倍章さんに話を聞いた。
※7頁のハハコモエールに「やさしいソックス」をご協賛いただきました。(レポート・植地宏美)

株式会社新藤本社コンセプトショップ●横浜市中区若葉町2-29(京急本線「日ノ出町」徒歩7分、地下鉄ブルーライン「伊勢佐木長者町」徒歩8分)
オーガニックの先駆けとして
株式会社新藤は1993年にオーガニックコットンブランド「天衣無縫」を立ち上げ、当時はまだあまり知られていなかったオーガニックコットン製品を製造、販売してきた。
オーガニックコットンとは3年以上農薬や化学肥料を使用せず、認証機関に認められた農地で栽培されたもの。だが一般的なコットン栽培には多量の農薬や化学肥料が使用され、環境問題となっている。また長時間労働の強要や児童労働なども存在し、これらを解決する方法の一つとしてものづくりを始めた。
日本での綿花栽培自給率はほぼ0%。日本には「オーガニックコットン」の明確な基準がないため、世界基準のオーガニック認証を取得するなど活動を続け、2023年に創業30年を迎えた。
人と地球にやさしい暮らしを
先代の代表が「あなたしかいない!」と事業継承したのが山本倍章さん(会長)。
これまで、建築材料を扱う企業を率いていた山本さん。化学物質の含まれた建材が当たり前という世界で、自然素材を使うことにこだわり、人が暮らす空間を健康にすることに尽力してきた人物だ。
人も含めた動植物の命の連鎖ですべてのことは成り立っていると意気投合、旧知の仲であったことから、2024年にバトンを受け取った。
「家づくり」で培ってきた、人々の健康と地球環境に貢献したいという思いは形を変え、より人々の暮らしに近づき、伝えていくこととなる。
「人が心も体も健康であるためには、何より大切なのが空気。空気の構造は酸素が20%、窒素が79%、そして1%がガスや二酸化炭素。この構造がほんの少しでも変化したら私たちは生きられないのです。今、環境問題は本当に重大な問題です。子どもたちの未来のためにも、お母さん、お父さんが何よりもまず、知らなければならない」。
山本さんは続ける。「南米アンデス地方の話を知っていますか? 森が火事になり、一滴ずつ水を運ぶハチドリに対して森から逃げた動物たちは『そんなことして何になるのだ』と笑う。ハチドリは『私は私にできることをしているだけ』と答えます。世界のさまざまな問題を見た時、一人の力ではひとしずくかもしれない。でもみんなでできたら大きな力になる。何事も最初は一人から。私はハチドリのひとしずくでありたい」。
自然を表現した空間づくり
今回、自然と調和し、心地よさを追求するブランドの世界観を肌で感じることができるようにと、コンセプトショップをつくった。1階はショップ、2階はギャラリーとラウンジとなっている。山本さんのコンセプトイメージを具現化し、デザインを監修したのはクリエイティブディレクターの大塚由美子さん。
「壁は珪藻土壁材、床は天然の無垢材で仕上げました。『天衣無縫』にちなみ、綱ぎ目のないシームレスな空間をつくりたかったので、壁や天上、トイレから什器に至るまで角をなくし不揃いなままに。すると雪のかまくらのような空間が、まるで母の胎内のように思えてきたのです」。
何より、この空間にはエアコンがない。遠赤外線輻射熱を放出するエシカルな次世代暖房システムを採用している。カーボン和紙を使ったシステムで、太陽の恵みである遠赤外線は、体の表面だけでなく、体の芯からじんわり温めるとされている。
実は3階にはリラクゼーション空間が設けられ、このカーボン和紙の効果を体験できる。暖房システムが設置された小空間に寝転がると、サウナのように大量の汗が滲み出てくる。通常サウナの熱は皮膚の浅い部分に作用するとされているが、遠赤外線はより深い部分にも届くといわれている。汗をかくことで爽快感が味わえる。忙しいお母さんにこそ、デトックス&リフレッシュ体験をしてほしい。



気軽に立ち寄ってもらいたい
持続可能な社会を目指して今、自分にできることは何かを考える。選択していくのは私たちだ。天衣無縫を通してライフスタイルを見直すきっかけとなる。コンセプトショップはその曲線と柔らかい灯りに包まれている。母の胎内にいるようなやさしさに包まれた空間。商品を手に取った時に「お母さん」の声や笑顔を思い出す、そんな命を育む場所になるだろう。
「ラウンジで寛いでもらったり、セミナーを開いたり。お母さん業界新聞とともに、母と子の笑顔を広げていけたらと思います」(山本談)。
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