静岡県では小学校に入学すると、ランドセルのほかに
「横断バッグ」という黄色いバッグを使う習慣があります。
今、県外にもじわじわと人気を広げているこのバッグ。
登録商標を持ち、製造販売している
「横断バッグのミヤハラ.,」の杉山司さんに、
誕生のきっかけやつくり手の思いを聞きました。
お父さんの思いから生まれたバッグ
横断バッグが生まれたのは1968年、交通戦争といわれる時代に遡ります。
祖父の宮原敏夫が当時小学生だった長男の大通りを渡る姿に危険を感じたのがきっかけです。横断用の小旗に代わる持ち歩けるバッグをと思い立ち、つくり始めました。
初期のバッグは、横断旗と同じ黄色で目を引くものでしたがマチがなく、重量もありました。その後改良を重ね、現在の主力商品は、マチ付きのナイロン製になりました。
けれども今も高級感を好み、レザー調のバッグを購入される方も少なくありません。静岡県内や愛知県の珠算教室さんでは、今も初期型バッグを愛用してくださっているところも多いのです。
お客様の声にこたえて58年
横断バッグは昔から、全国でご利用いただいてきましたが、ネット時代になり、いろんなところから注文が入るように。東京や大阪、名古屋などでは、取り扱ってくださる書店さんもあります。
ティッシュ&ハンカチケースは、お客様の声から生まれました。何度持たせても落としてしまう男の子に持たせたいという、お母さんの声を製品化したものです。
中高生や大人の方にも持っていただけるよう、スマホホルダーを商品化しましたが、想像以上の人気に驚いています。
6年間使ってもらえるように
こだわっているのは純国産であるということ。年間5~6万個の製造は、20~25人の手にかかっています。「6年間使ってもらえるように…」と心を込めて、一つひとつ丁寧につくっていますバッグの撥水加工は必須ですが、洗うとどうしても効果が落ちてしまう…。
ですから、汚れた部分だけを拭き取ることが、防水機能を長持ちさせるコツですね。
災害や犯罪から子どもを守るために
子どもたちの危険は交通事故に限らないことに気づき、視野が広がりました。
2010年には、防犯絵本として『おにのいす』をつくり販売を開始。裏面に「おにのいす」をプリントしたバッグも販売しています。
2011年の東日本大震災を機に、浮力材つき横断バッグや笛つきの「ミクロ君」など防災を目的とした商品も開発しています。ミクロ君は防犯だけではなく、被災時に自分の位置を知らせる役目を併せ持つため、身につけやすいサイズにしているのが特徴です。
愛用者の皆さんに心から感謝
雪が降らず、歩き通学ができる静岡だからこその「横断バッグ」です。他県であれば、こんなに広がらなかったはずで、静岡の皆さんが愛用し、この地に根付かせてくださったことに感謝です。
また、自分が親になってから、お子さんに使わせてくださっている方もたくさんいて、うれしく思います。これからも皆様に使っていただける、いい商品をつくり続けたいと思います。
お母さん大学生に聞きました
「横断バッグ」って知ってる?取材日前夜、全国の「わたし版」編集長たちにLINEで質問。「横断バッグって知ってますか?」。
結果、「知っている」お母さんは23人中4人。「入学式でもらった」(広島)、「1年生は皆持っていた」(横浜)、「並んで持って歩いてる」(大阪)。だが話していくうちに、「横断旗とかぶったかも」「珠算教室の子たちだけだったかも」と記憶はあいまいに…。
母の傍らにいる子どもたちが、「わー、かわいい。これ持ちたい!」と叫ぶシーンもはさみつつ、LINEチャットは続きました。
「最近子どもの事故が多いので、親としては持たせたい」「うちのほうでは“見守り隊”が横断旗で守ってくれるから大丈夫」「ドライバーからすれば目立っていい」「スマホケースや名刺入れがかわいい」の声に交じり、「“横断中”ならぬ“母力充電中”バッグ、MJ用につくってもらいたい」というちゃっかり意見も。
話はさらに広がり、「みどりのおばさん」や「集団登下校」や「旗当番」の話まで。「変質者も気になるから、うちの学校は安全対策をどう考えているのか聞いてみよう」と言い出す人も。
横断バッグのミヤハラ.,の考え方の根本にある、小学生を交通事故から守るだけでなく、すべての人々の「安全意識の向上」に役立ちそう。という意見で一致したのはさすがお母さん記者!
株式会社宮原商店(横断バッグのミヤハラ.,)
静岡県静岡市駿河区池田130-3
TEL054-281-8468(月~金 9時~17時)
取材を終えて…………………………
生まれも育ちも静岡です。私が子どもの頃はオレンジ一色でしたが、今回カラフルな横断バッグに心が踊りました。6年間使える耐久性があるとのことでしたが、いろいろな色のバッグを持たせたいと思えるほどでした。ネットでも買えるので、皆さんもチェックしてみてください。これからも静岡県が誇る商品として、横断バッグがたくさんの人の手に渡っていくことを願うばかりです。
聞き手/MJ田村由佳利 (お母さん業界新聞PARASOL静岡版編集長)
(お母さん業界新聞1908/MJ記者が行く!)
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