素晴らしい本を見つけた。『育児は仕事の役に立つ』(光文社)。
著者は、
銀行、人材教育ビジネスに従事後、東京大学の社会人大学院生になった浜屋祐子氏。
「育児をする経験」がビジネスパーソンにとって
どのようなポジティブ影響をもたらすかを研究している。
もう一人の著者は、人材開発の研究者である東京大学准教授の中原淳氏。
母親一人で抱え込む「ワンオペ育児」から、母親と父親で行う「チーム育児」を推奨。
イクメンという言葉に違和感を感じていた私には、しっくりくる。
ある研究では、親になることによって「柔軟性」「自己抑制」「運命・信仰・伝統の受容」
「視野の広がり」「生き甲斐・存在感」「自己の強さ」が成長するとあった。
(出所:柏木恵子・若松素子「親となる」1994年)
東大の先生が言うと、妙に説得力がある。
アカデミックなデータ分析に自身の育児体験と反省までを交えながら、
一般人にも読みやすく書かれている。企業の人事・総務・企画経営担当者には必読書だ。
それなら、お母さん大学だって負けていない。
抱っこしてもおむつを替えても泣き止まないわが子を見て、
あ~でもないこ~でもないと悩む、母親の「創造力」。
おもちゃを片付けないわが子にイライラしながらも向き合う「忍耐力」。
寝顔に「今日も怒ってごめんね」と涙する「包容力」。
子育てをしながら地域に関わり、「コミュニケーション力」や「判断力」、「企画力」までも培える。
30年間の研究(活動)で、お母さん大学生たちが見事に実証してくれた。
お母さん大学の先生はわが子、キャンパスは家庭と地域。
東京大学まで通わなくても日々学べるし、学費はわずか年間6000円。
テキストは、自前の「お母さん業界新聞」。配達だって自分でやる。
それは人と人をつなげ、笑顔を広げる種まき活動。
東大には誰でも入れないけど、お母さん大学には誰でも入れる。
なんだかワタシ、対抗してる?
お母さん大学は今年、「百万母力育休プログラム」をスタートさせた。
育休中の母親がペンを持ち、わが子へのレポート(新聞)をつくりながら地域とつながり、
安心できる子育て環境を自ら整備するプログラムだ。
復帰後は、見違える人材になるはずだ。
働く母親にとって育児が戦力となれば、育児への励みになる。
育休社員が生産性(売上)を上げたら、企業は積極的に、社員に育休を勧めるだろう。
そしてお母さん大学は、東京大学より有名になる。なかなかいいシナリオだ。
(藤本裕子学長コラム 2020.3月号)
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