読書の秋。11月号は絵本の特別号となった。
人生の後半まで、絵本は子どもが読むものだと大きな勘違いをしていた私。
もう一つ、子どもは飛んだり跳ねたり泳いだり…、
絵本の世界を自由に楽しむことができる天才だということも知った。
お母さん大学生の萩尾かつらさんの短い記事。
昨日の夜/息子に絵本を読んでもらった/少し冷たい風が吹いてくる部屋/
隣りどうし布団に寝転んで/寝る前の絵本タイムって/こんな感じだったんだ/
言葉にできない/あたたかい時間
お母さんがわが子に読み聞かせをする。
その声が子どもの心と体いっぱいに広がり、母にこだまする。
読み聞かせをするお母さんたちは、わが子から絵本の世界への招待状をもらえる。
けれど萩尾さんは、ちゃっかりわが子がいる絵本の世界への特別無料チケットをゲット。
あたたかい時間に癒されている。
わが子は、どんなときも母を受け入れ、助けるのか。お母さんとはいいものだ。
だいぶ前に、「子どものらくがきアート」というイベントを企画したことがある。
子どもが何気なく描いたらくがきに、
お母さんアーティストが手を加えて素晴らしい作品に仕上げ、
横浜市営地下鉄駅のコンコースにズラリと並べた。
子どもたちが描いたらくがきを、「愛おしい」と彼女は言った。
当時の私は子どものらくがきをポイと捨ててしまうダメ母だったから、
その一言は衝撃的で、彼女の感性が羨ましかった。
子どもの世界は果てしなく大きいものだと、彼女は知っていたのか…。
子どもが描く絵には、大人には見当もつかない想像の世界や夢があるのだろう。
どこか絵本と共通しているのかもしれない。
さて、子育てに疲れたら、一時わが子のそばで、
読書の秋を楽しもう。
子どもに絵本の世界へのパスポートをもらえたら、言葉にはならない、
あたたかな時間を体験できるに違いない。
でもくれぐれも、わが子の神聖なる絵本の世界を、汚したり邪魔したりしないように。
私には、今さら読み聞かせをさせてくれる子どもたちはいない。もう、あの日には戻れない。
だから、せっせと絵本畑を耕そう。
畑仕事には最高の季節だ。
(藤本裕子)
お母さん業界新聞2020年11月号 編集長コラム・百万母力
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