お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

扉の向こうに、きっとある光

馬車道に開かずの扉がある。
横浜市市民文化会館(関内ホール)の建物の外壁に埋め込まれた重厚な扉。
思わず立ち止まり、眺めてみる。

横浜興信銀行の旧本店の扉で、1938年建築当時のもの。
1960年には移転のため、横浜市中区役所の庁舎として使用された。
その後、老朽化などを理由に建て替えられ、現在のホールになった。歴史ある扉だ。

私が生まれ育った東北の田舎町から、縁もゆかりもない横浜に就職しようと決めたのも、実は扉が関係している。

実家を出る気は毛頭なかった。社会勉強のためにと、東京や横浜へも面接試験を受けにきた。
最後に訪れた会社の入口には、重厚な鉄の扉が待ち構えていた。
その扉を見たとき、私は人生の始まりに、この重い扉を自分で押し開いてみたくなった。

念願叶って住み始めた横浜。毎日仕事終わりに馬車道を抜け、伊勢佐木町商店街を歩いて帰宅した。
まだ関内に丸井があった頃だ。何度も通った道だけど、当時の私は関内ホールの壁の扉に気がつかなかった。

今この扉に魅かれるのは、私にも開けられない扉が増えたからかもしれない。
楽しいことも辛いこともあったが、もう戻れない場所もある。

いつしか母になり、3人の子どもたちと暮らす日々。
成長とともに、彼らの心にも私の知らない扉ができていて、こちらからは決して開けることができない。
時にはノックしてみたり、プレゼントを扉の前に置いてみたり。

彼らが満面の笑みで、扉を開けてくれる日はいつだろう。

(お母さん業界新聞横浜版2021年2月号 編集長のYOKOHAMAさんぽ より)

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植地宏美
お母さん大学横浜支局。 お母さん業界新聞横浜版編集長(2019.10〜2021.12)。 長女21歳、長男17歳、次男15歳。 お母さん大学をものすごく、楽しんでいます。 結果、 お母さんをものすごく、楽しんでいます。