お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

〝母〟のぬくもり

看護師としてパートしている私。

働く病棟には、ほとんど寝たきり状態の高齢者の方ばかり。

今日担当した80代後半の女性。

認知症のある方なので、意思疎通ができない事も多々。

ご飯も自分で食べることは難しい。

誤嚥しないよう、隣に座り食事介助にはいる。

そんなお昼のひと時。

 

その方の薬指に光るゴールドの指輪を見て、

『結婚指輪ですか?』

と何気なく、私が尋ねると、

少しびっくりした顔で、自分の左手を眺めて…

少し間があってニッコリと笑った。

『母の形見なの』

 

まず、しっかりとした顔つき、はっきりとした言葉で、返事がきたことにビックリした。

こんな顔できるんだ!と。

『そうなんですね。素敵ですね』

と答える私に、もう返事はなかった。

 

また私が口に運ぶ食事を黙々と食べ始める。

食べているのは、ドロドロのミキサー食。

噛む力も飲み込む力ももう弱い。

食札はあるが、どれが何のオカズなのか一瞬で把握することも難しい…

見た目は赤ちゃんが食べる離乳食と一緒だ。

 

何十年も前に、この方に同じように食事を食べさせていた〝お母さん〟がいたんだ。

そう思うと、何だか胸がいっぱいになった。

認知症になり、自分がどこにいるのかも、相手が誰で何をしてるのかも分からない状況になっても、〝母〟という存在は消えない。

〝母〟を思い出すだけで笑顔になる。幸せになる。

〝母〟のぬくもりってすごいなぁ…

思い出だけになっても、ずっとずっと抱きしめてくれるんだなぁ…

勤務中にも関わらず、女性の指輪を眺めながら、涙が出そうになった。

 

その日の夜、グズグズモードの4歳末息子に、ご飯を食べさせる私。

〝母〟としてこども達に接する。

いつか、この子たちも〝母〟のぬくもりを思い出す日がくるのだろうか?

色んな想いがグルグルめぐって、

夕飯の洗い物もそのままにして、久々に実家に電話した。

最後に、私が〝母〟のぬくもりを求めて…

 

誰にだって、いくつになっても、〝母〟という存在は特別。

こども達に、たくさん〝母〟のぬくもりを残せるように…

抱っこ攻撃にうんざりしてたけれど…たくさん抱きしめて、一緒の時を過ごそう。

そして、私もどんどん老いていく〝母〟との時間を大事にしよう。

なんなら、次は抱っこして!っておねだりするか!?!!

 

 

そんな事を改めて思った日。

気づかせてくれた女性に感謝したい。

5件のコメント

素敵なエピソードをありがとうーーーー。
私も思わず泣いてしまいました。
その方にとって、指輪がお母さんとつながる、思い出す、あたたかな愛を感じるもの、時間なのかもしれませんね。
そう思ったら、お母さんって深いなって改めて思いました。
脇門さんの思いもあわせて、知ることができて幸せ、うれしかったです。

看護師の仕事を通して人間の奥深さを感じる脇門さんって素敵です!
心に余裕をもたらしてくれた、母という存在に気づくって素敵です。

私は金の指輪を見ていた・・・のところで、私の祖母が同じように事故にあい、言動がおかしくなり
当時は認知症という言葉はなくても、そうなったことを直感した20代の私が見た光景が
同じように寝たままで金の指輪を見ていた祖母と重なりました。
祖母の場合は若いころからオシャレさんだったから、きっと奇麗だなと眺めていたはずですが(笑)

流動食には、現在姉のような存在の叔母がガンの転移が次々出ていて、手術の繰り返しで流動食の話が
出ますから、それにもかかわらず生きる希望を持つ会話をする努力を学んでいる最中です。

人間は奥深い存在ですね。

誰もが赤ちゃんだったことがあって、誰もが老いていく。
そんな当たり前のことなのに、支える人たち、お母さんやお父さん、介護をしている方々が弱者になってはいけないよね。
すてきな記事をありがとうございます。

泣ける。その方もきっと脇門さんに聞かれて、母を思い出して温かい気持ちになっただろうね。
祖母も母もそして私も、母ってお守りみたいな存在。離れてても思い出すだけで強くなれる、ずっと味方でいてくれる。
母に会いたくなったよ、電話しよう。

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ABOUT US
脇門比呂子
神奈川県横須賀市に住んでいます。 長女小6、次女小3、長男小1、小学生3人のお母さんやってます! まさか自分が3人の母になるとは?!同じ繰り返しの日々のように感じ、悶々としていた時にお母さん大学に出会ったのが6年前。 ありのままの自分に自信が持て、子育てが心から楽しめるように!MJプロです^_^