お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

母歴は、わが子のそばで輝く

育休から復帰したお母さんが、仕事についていけず、職場で重要な仕事を与えられないと悩んでいた。その企業は社員の素晴らしい経験を生かせていない。なんて、もったいないこと。

かつて私も、「主婦10年すると使いモノにならない」といわれた時代に起業した。自分自身と、社会と、戦いながら生きていた頃の私は、正直きつかった。

だが今は違う。子育てがどれほど素晴らしい営みか。その感性が、仕事や社会でどれほど役立つかを知ったから。お母さんたちが自分の中にある母力を知ると、ふっと力が抜け、今まで見えなかったことが、どんどん見えるようになる。

朝から晩まで家族にごはんをつくり、暗くなるまで子どもと遊び、山のような洗濯物にうんざりする。毎日同じことの繰り返し。でもそんな何気ない日常にこそ、生きていくために大切な知識や感性がある。

今年スタートした「МJプロ養成講座」は子育てのノウハウを教えるものではなく、「もっともっと、フツーのお母さんを目指そう」という趣旨だ。受講するお母さん一人ひとりに最初にやってもらう作業が「母歴書」づくり。これこそが、母である自分に向き合う「母時間」だ。

子どもを育てるだけで何もできていないと思っていたお母さんが、「母時間」を見つめると、その歴史が色づいてくる。何を書いていいかわからないときは、目の前にいるわが子を見ればわかる。ペンを持ち、母歴書に向き合うと、わが子を育てている歴史が、未来につながっていることに気づく。

職場でも母歴書を採用すれば、社員の才能を仕事に生かせるはず。採用時にどんなお母さん(お父さん)ですか? どんな子育てをしてきましたか?と尋ねる企業が増えると、もっといい社会になるのに。

長女が16年ぶりに仕事復帰した。どっぷり4人の育児生活で、パソコンも苦手、慣れない接客業…、自分より年下の上司に叱られてばかり。理不尽なことを言われても「すみませ~ん」と笑って聞き流すというから、思わず「文句言わないの?」と私。

それを言っても、誰も楽しくないでしょと、さらりと言う。娘の忍耐力というか、包容力に感動した。子育てで培ったのだろう。お母さんはスゴイ!

ある日、娘の職場を遠くからのぞいた。カウンターにいた娘は、店全体を母のオーラで包んでいるように見えた。これならお客様も増え、売上も上がるはず。

アフターコロナは、ロボットが主役になる時代。だが子育てという母の仕事は、AIに代えられない。どうしてもAIのお母さんをつくりたいという企業は、ヘンなものをつくられては困るので、お母さん大学のお母さんたちに聞いてください。

(藤本裕子)