少し前に話題になっていたが、子ども遊び「ままごと」のお母さん役が、絶滅危機になっている。昔はままごとをよくやった。「お母さんごっこ」とも言ったが、主役はお母さんで、誰もが「お母さん役」になりたがった。
ところが今、その「お母さん役」に手を挙げる子どもがいないという。ままごとで一番人気は、なんとペット役だと。ペットはかわいがってもらえて宿題もしなくていいし、子どもたちにとっては理想的なのかも。
ままごとの舞台が、家庭からお店や幼稚園に代わっているらしい。ある学校では「スターバックスごっこ」をやっていると聞いた。
おもちゃでもハンバーガー屋やアイスクリーム屋が人気だが、ままごとにスタバが参入か。レジはピッだし、支払いはペイペイだって。ままごとは子どもの見たままの世界、つまり再現ドラマさながらだ。
ままごととは、「飯事(ままごと)」「まねごと」から来ていて、起源は平安時代に遡る。「子どもが大人の世界を模倣する遊び」とある。だとしたら、子どもたちから見た時に、「お母さんの世界」を模倣したくない現実があるともとれる。由々しき問題だ。
息子さんを東京の自由学園に通わせているお母さんに聞いた話。寮生活の中で中1生は、たらいと洗濯板で服を洗っているという。その日の朝も、用事があって息子に電話をしたら、「学校行く前に洗濯するから! 忙しいから、じゃあね!」と切られたのだとか。
話を聞いて、ほくそ笑んだ。ゴシゴシともみ洗いをしながら、彼は何を考えているのだろう。大人になった日、この経験をどう感じるのだろう。
生活を学ぶことこそ真の教育だと、この学校の創始者である羽仁もと子さんは言っている。だとしたら本来、それを教えられる唯一の場は家庭でなければならない。
さて、お母さん業界がやるべきこと。キーワードは、お母さんの「真」の笑顔。なぜなら、真の笑顔でないと子どもには伝わらないし、真似してもらえない。
お母さんのステージは半径3メートルの世界。そこがわが子の未来につながっているとすれば、自ずと大切なことが見えてくる。
あるお母さん大学生が、写真を見せてくれた。2歳の女の子が、背中に人形をおんぶし、さらにペンを持って何かを描いている…。
「お母さんがペンを持てば笑顔になる」と言い続けているお母さん大学。
まだ絶滅はしていない。生き延びるぞ!
(藤本裕子)
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