『ペンを持つと ボクね』(竹林館)
これは、ある詩集のタイトル。
帯には…
ーーペンをもつと ボクね 空をとべる
ペンをもつと 海にもぐれる
ペンをもつと こころドキン
ペンをもつと うれしくなって
ボクね ひとりじゃないーー
とある。
タイトルと帯だけを見て、ポチっとして手に入れた。
心の中では『ペンを持つと ボクね』の「ボク」が、
「お母さん」に自動変換されていた。
本をめくると、やさしい線画と美しいことばがハーモニーを奏でていた。
海や山、虫や鳥たちも、うれしそうに踊っている。
やさしい絵とことばがメロディーになって、私の心に響いてくる。
あとがきを読んで知った。
作者の柿本香苗さんは、2010年に小学校の介助員として、当時1年生だった川上裕己君と出会う。
裕己君が難病の進行性筋ジストロフィーと診断されたのは2歳のときのこと。
体が少しずつ動かなくなっていく中で、心は誰より自由な裕己君。
彼の描く絵の世界に感動し、後押しされるように綴られたことばたち。
私はそこに、柿本さん自身が自由を求めているような気がした。
お母さん業界新聞の一番の記事は、お母さんたちの書く「母ゴコロ」。
何気ない日常にあるわが子の成長や感動をことばにする。
母にしか書けないものだ。
私は母ゴコロの記事に感動し、時に寄り添い、
時に自身の子育てと重ねながら編集をさせてもらっている。
幸せな仕事。
なのに私は、「ペンを持つとお母さんは笑顔になる」と、押し付けてばかり。
2人の共作であるこの詩集が、とてもまぶしい。編集とは、心を編む作業なのだから。
これからはこっそり言おう。「お母さんはペンを持つと笑顔になるよ」と。
ペンを持つとお母さんはね…の続きは、
ペンを持ったお母さん一人ひとりが感じること。
ずっと新聞をつくってきたけれど、まだまだちっぽけなワタシ。
でも、ペンを持つと ワタシね…。
(藤本裕子)
お母さん業界新聞2020年12月号 編集長コラム・百万母力
今回のコラムも、とっても好きです。
介助員の仕事をしながら、それはサポートという仕事の内容でありながら、豊かになるのは私自身なんです。
わたし版を書いて、はばたいている私です。