お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

ボツになりそうな、お母さんサミット

『どうぶつ会議』(岩波書店刊)という本に出会った。今月号で「戦争体験談」を聞く特集を企画しなかったら、手にしなかった絵本。

内容を少し紹介すると、人間の世界では国のトツプたちが集まってさまざまな国際会議をするが、戦争や貧困は少しもなくならない。それに呆れた動物たちが結束し、世界中の仲間に呼びかけ、子どもたちのために、最初で最後の「動物会議」を開くというお話だ。

「一ヵ月後のきょう、動物会館で、会議だ!」というメッセージが、瞬く間に世界中の動物たちに届く。動物会館に集まってきた動物たちの動きや表情に、ワクワクが止まらない。

作者のエーリヒ・ケストナーは、ドイツの詩人で作家。貧しい家庭に育ち、2度の世界大戦を経験しているからこそ、この作品が誕生したのだろう。時に皮肉を交えながら、明るくユーモラスな語り口で子どもたちの歓びと悲しみを描いている。

第二次世界大戦後、名だたる平和会議や国際サミットが世界各地で80回以上も開催されている。が、現在も、50か国以上で紛争が起き、貧困もなくならない。

余談になるが、2016年「みそまる普及委員会」として、日本で開催されたG7伊勢志摩サミットで、味噌にだしと具材を混ぜた味噌汁の素「みそまる」をつくり、主要7か国をイメージしてつくった「G7みそまる」を各国メディア陣にふるまったことがある。

みんなでまあるくつながる「輪=和」をイメージしたみそまるだ。7本の国旗と共にみそまるを並べて平和を願ったが、世界は少しもまあるくつながらなかった。

以前からずっと描いている夢。各国首脳陣ではなく、フツーのお母さんたちが世界中から集まって、未来の子育てを考える「世界お母さんサミット」を開催すること。

『どうぶつ会議』を読んで、ちょっぴり恥ずかしくなった。確かに机の上で、世界平和が実現できるはずがない。では、私たちに何ができるのか…。

まずはこの本を、一人でも多くのお母さん、お父さんに読んでもらって、愛するわが子の笑顔を絶やさないために何ができるかを考えてもらおう。もちろん政治家たちは、今すぐこれを読まなければならない。だができることなら、子どもたちにはあまり読ませたくない。

しかしながらこの作品、「岩波の子どもの本」として、とてもよく売れているらしい。ならばいっそのこと、子どもたちに知恵を借りてみるのはどうだ。

夏休みには、親子で読書を!
藤本裕子