ーー毎朝父ちゃんを見送ったあと、
近くの駅までお散歩するのが娘と私の日課。
先日イベントで、はじめて電車に乗ったのが楽しかったようで、
以来、駅へ行くと、決まって電車に乗りたがる。
今朝も同様、「お金を持ってないから電車には乗れないよ」言っても聞かない娘。
ラッシュの人込みに紛れ、泣き叫ぶ娘を無理矢理抱っこして、なんとか家まで辿り着いた。
鍵を開けようと娘を地面に下ろした瞬間、
「でんちゃぁー!!」と叫びながら再び駅へ向かってダッシュ!
とうとう根負けし、「今日だけだよ」と言ってお金を持って再び駅へ。
娘はニコニコ満面の笑み。
そんなこんなで、ひと駅たった2分の電車の旅…。
ーー(お母さん大学サイト母ゴコロより抜粋)
お母さん記者の齊木聖子さんの記事を読んでいて、
遠い記憶が蘇った。
母はずっと商売をしていて、毎日明け方まで仕事。
私には、ふつうの親子のように、公園で母と遊んだ記憶はない。
ある日のこと。
飛行機を見に行こうと言い出して、私を福岡空港へ連れていった。
空港ビルの屋上で母と眺めた飛行機の離着陸。
その美しさに、子どもながら心が騒いでいた。
すると突然、「乗りたい?」と母。
質問の意味がわからず、ぽかんとする私。
母は返事も待たず、私の手を引いてカウンターへ行き、
チケットを2枚買った。
狐につままれたような面持ちで、私は機上の人となった。
そのとき母は、サンダル履きに前掛け姿。
商売をしていたため、いつも財布を持たず、
前掛けのポケットに現金を入れていた。
そんなわけで、その日、生まれてはじめて
飛行機に乗って宮崎へ行き、とんぼがえりした私。
離陸のときのドキドキや、雲を間近にした驚きが、
十数年後の、私の仕事に繋がったのかもしれない。
母の突然の行動は、日頃、何一つお母さんらしいことをしていない
後ろめたさゆえの私へのギフトだったのか、単なる思いつきだったのか…、
今となっては知る由もないが…。
ひと駅2分の電車の旅をした女の子のおかげで、
懐かしいあの日のことが、鮮明に思い出された。
本当は、私もあなたのように、
お母さんと一緒にひと駅2分の電車の旅がしたかった。
あなたを羨ましく思う、小さな女の子の私がいる。
いくつになっても、母は恋しいものだ。
後日談。
18歳でCAとなり、初フライトのときのこと。
なんと、客席の一番前の席に母が座っていた。
どうやってその席を確保したのか、定かではないが。
その尋常でない行動は、
今の私に少しだけ受け継がれているのかも、と思えてくる。
藤本裕子
(お母さん業界新聞1711/百万母力)
斎木さんのお母さんも藤本さんのお母さんも想いは繋がっていますね。
ふっと何かが背中を押したんでしょうね。
日頃忙しくしていて子どもと共にある事を嬉しく思ったのはお母さんだったのですね。
その時にできる事を精一杯楽しんだことでしょう。
どんなにすれ違いの時を過ごしていても お母さんの子どもへのまなざしは変わらないのですね。
母を偲んでいます。
積山さん
コメント、ありがとうございます。
不思議なことですが、齊木さんの記事を読んでいたら、
50年前のことが蘇ってきたのです。
おかげで、百万母力が書けました。
齊木さんとにこちゃんに感謝です。