お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

お母さん、でなければ、何にもなりたくない

気象庁によると、関東では2月4日に「春一番」が吹いたらしい。

「春一番」とは、立春(2月4日頃)から春分(3月21日頃)までの間に、日本海で低気圧が発達し、広い範囲で初めて吹く、暖かくて強い、南よりの風のこと。

由来を調べてみると、1859年2月13日に長崎県壱岐郡郷ノ浦町の漁師が出漁中、強風によって転覆し、53人の死者を出した。急発達する低気圧を知らせる、防災上、非常に重要な表現だそう。

漁師たちの間で「春一」と呼ばれていたものを「春一番」と呼ぶようになったという。春一番というと、やさしい春の到来を告げるようなイメージだが、生きるか死ぬかの言葉だったのか。

しかも気象庁が「春一番」を発表するようになったのは、1976年にキャンディーズの『春一番』という曲がヒットし、問い合わせが殺到したことがきっかけと知って驚いた。気象庁は、防災情報を充実させることにうまく利用したというわけだ。

春一番が吹くと、「♪もうすぐは~るですね~」と口ずさんでしまう同世代の人には、興味深い話だろう。

この歳になっても、まだまだ知らないことばかり。一生勉強だなぁと自戒しつつ、原稿を書いていたら、あるお母さんから「今、陣痛が始まりました!」と、うれしい知らせがLINEに届いた。

まさに、お母さんの「春一番」だ。彼女にとっては3度目になるが、お産は一人ひとり、命がけの営みなのだ。

今号は、「母親というものは」というテーマで作詩を、と宿題を出した。

卒園、卒業…こんな忙しいときに、と誰もが思ったに違いない。いやむしろ、こんなときこそお母さんたちには、ペンを持ってほしい。

たくさん涙を流した人ほど、いい詩が書けるというが、母たちはみな、偉大なる詩人。

論より証拠。特集には春一番、いや、春の嵐を連想するような、母たちの詩が並んだ。

小説『春の嵐』の作家、ヘルマン・ヘッセは、牧師の家庭に生まれて神学校に進むが、「詩人になるか、でなければ、何にもなりたくない」と脱走したという。

巷では「お母さんになりたくない」人が増えているが、お母さん大学には、「お母さんになるか、でなければ、何にもなりたくない」人で溢れている。

それは、春の嵐のように大変な子育てを経験したからこそわかることなのだ。
ヘッセの『春の嵐』を、もう一度読んでみたくなった。
(藤本裕子)