編集部に来ると、たっくんは、まず野村香ちゃんの写真の所に行く。
編集部には、14年前に行方不明になった当時の香ちゃんの写真が貼ってあるのだが、
ある日、たっくんが香ちゃんの写真を指して、「香ちゃん!」って言った。
うそみたいな話だけど、思わずスタッフの金子と顔を見合わせて、「
今、香ちゃんって言ったよね!?」と、2人で興奮した。
たっくんが生まれて間もないころから、なぜか香ちゃんの写真に反応するので、
「香ちゃん、どこにいるんだろうね」「早く帰ってくるといいね」と、いつもたっくんに話かけていた。
ちなみに、現在のたっくんのおしゃべりボキャブラリーは、「ブーブー」「マンマ」「パパ」「ちゃーちゃん」…。
「ちゃーちゃん」というのは、私のこと。わが3人娘は、今でも私を「ちゃーちゃん」と呼んでいる。
つまり、たっくんはママより先に私の名前を覚えたのだが、これには娘もちょっぴり不満気。
と同時に、私的には、かなり自慢したいこと(ただ言いやすいんだよ、と周りは言うが…)。
話は変わるが、最近ちょっと感動的なシーンに遭遇した。
某ホテルのレストランでモーニングをしていたときのこと。
外国人のお母さんが1歳くらいの子どもを抱っこしてバイキング料理を前に、
一つひとつ「Would you like potatoes?」「Would you like fruits?」
(ポテト食べる? フルーツ食べる?)と、丁寧に子どもに聞いていた。
私は驚いた。抱っこしながらお皿に料理を取るだけでも大変なのに、
その母親は1歳の赤ちゃんを一人前に扱っている。
きっと私なら、子どもが食べられそうなものを勝手に選んでしまうだろう。
頭をガーンとたたかれた気がした。
1歳の赤ちゃんも、ひとりの意思ある人間。
だとしたら、子どもが「いやだぁ」と駄々をこねるのも、成長のあらわれだってことがわかる。
以来、たっくんを赤ちゃん扱いするのではなく、努めてひとりのボーイとして扱い、言葉かけも大切にしている。
最近は、わざわざたっくんに電話をかける。
娘が「たっくん、ちゃーちゃんから電話よ」と取り次いでくれる。
そしたらたっくんは、「ぼくに用事?」みたいな感じで、うれしそうに受話器を取るらしい。
そして先日、たっくんが初めて、電話口で「ちゃーちゃん?」と言った!
(オババの育児日記/LIVE LIFE 2006年6月号)
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