幸一に会ってきた。
412号室。きれいな個室。空気がよどんでなくてよかった。
ヒゲが随分と伸びていたが、それ以外は顔だけ見ていると、入院前と何も変わらない。
すぐにでも家に帰れそうに思う。
でも、喉にはカニューレが入っている。
痛々しいが息子の命を繋ぎとめている大切なもの。
それもひっくるめて幸一の身体なのだろう。
「幸一、のど痛くない?」
何度も聞いたが私と目を合わせようとしない。
痛みは無いのだろうか。
入院生活をどんなふうに感じてるのだろうか。
どうして顔を見てくれないのだろうか。
幸一の気持ちが分からず不安になった。
福田さん
幸一さん、どうしたんでしょうか?
目を合わせのは、幸一くんの意思なのでしょうか?今までにはなかったことなのでしょうか?
笑顔が見たいです。
田端さん
今までに無かったことです。
表情ひとつ変えません。
今度会えるのは来週の火曜日です。
わたしの目を見て欲しいです。