お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

エヴァちゃんが笑顔になってきたよ!

土曜日の昼下がり。ルーマニア・クルジュのドネーションセンター(寄付会場)には活気があった。
侵攻から逃れてきたウクライナ人の支援活動を真っ先に始めたパトリチア・クドウさんは、「だいぶ物資も集まり、収納棚も作られて、オムツや服のサイズも探しやすくなった」と話す。

「後ろにいる女性たちはウクライナのママたちよ!」
パトリチアさんがビデオを向けると、彼女たちは手を振ってくれた。つい3週間ほど前に避難してきたばかりの女性たち。

ルーマニアの人たちが用意してくれた住居で暮らせるようになると、各々が家にいても不安が募るばかりなので、自分たちも何か手伝いたいと申し出てくれたそうだ。てきぱきと動き、笑顔もあった。

その傍らに、お母さんに抱かれた女の子の姿があった。
名前はエヴァちゃん。4歳。親子で逃げることを先決に、車で4日間かけて移動していたため、小さいエヴァちゃんは食が細くなり、ルーマニアについてからしばらく病院で点滴を受けていたそうだ。一瞬ビデオ越しに目があった。手を振ってみても表情は固かったが、わたしの娘が作った折り紙を見せると、興味を示してくれた。

ちょうどこちらも土曜日の夕方。そばにいた娘を呼ぶと、画面越しにお互い気になったようで、少し緊張しながらもなぜか目を離さない。もしかしたら、そばにいたら一緒に遊べただろうか。

「月曜日、わたしの子どもたちの通う英語の学校にウクライナの子どもたちを連れて行くの。先行きがまだ見えないけど、ここでどんな教育を受けられるか相談に。まずサッカーやプール、PCもあるから、子ども同士で遊びながら仲良くなったり、安心の場所になったらいいですね」

そんな話を聞いていたら、エヴァちゃんが母親の腕から離れ、寄付品のおもちゃの中からかわいい車を見つけだした。さっそく手にとり、遊びだすと、表情も和らいできた。

わたしの横にいた娘はというと、そんなエヴァちゃんの姿を見て、突然手紙をエヴァちゃん宛に書き出した。

「エヴァちゃんへ
こんにちは。ウクライナからにげてきたとき、けがはなかった?
エヴァちゃんはなんのたべものがすき?
好きなあそびはなあに?つぎはなんさい?
わたしはもうすぐ小学2年生です。
おうえんしているね」

娘はそう書きながら、お気に入りのスタンプをていねいに押していた。

「なんで急にお手紙を書こうと思ったの?」と聞くと、
「うーん。なんかわからないけど、なにかしたくて」

とてもシンプルな答えが返ってきた。
相手が日本語を読めるのかとか、そういうことよりも、まず気持ちを伝えたいとペンを持った娘がそこにいた。

子どもには子どもの世界がある。
パトリチアさんたち、そしてウクライナのお母さんたちもその世界を守ってあげようと心を寄せ、動いている。

一方で、パトリチアさんとこんな話もしていた。いま、日本に住むロシアの人々も胸を痛めている声やロシア人という理由で学校でいじめを受けてしまった子どもがいるという報道。

「もちろん!○○人が、じゃないよね。ニュースの影響が大きすぎる。ニュースからはどうしてもネガティブな情報が残るし、ヘイトを生みやすい。そうじゃなくて、思いやること、愛すること、守ること。時間がかかるけど伝えていきたいね」

わたしたち母親は子育てをしている。いつもは自分の子どもを育てることに精一杯の気持ちだったが、子育てで社会を作っている道の途中だと、ふと気づかされた。

後日、パトリチアさんからメッセージをもらった。

「エヴァちゃん、笑顔になってきたよ!」

そこには、お気に入りの車のおもちゃを手に微笑むエヴァちゃんの写真があった。

どの国の親子もどの国の子も。
一日のうちに笑い合える瞬間がありますように。
ささやかでも、そんな生活が守られますように。

6件のコメント

今回も記事ありがとうございます!
そう、ほんと、こういう「人々の生活」が知りたい。
ニュースはセンセーショナルなことばかり。
(そういうネタが好きなんですよね、メディアは)

画面越しでも通じ合う子どもたち。
そして、「子育てで社会を作っている道の途中」という言葉、刺さりました。
本当にそうですね。
ありがとうございます。

天野さん
コメントありがとうございます。そう言ってもらえて、救われた気持ちです。
3.11の時はアブダビにいました。夫の祖父母や親戚が宮城県に多くいるので、CNNとかで流れてくるニュースを見ては夫はどんどん辛くなっていってて。
そんな時、私たち日本人に祈ってくれる人、声をかけてくれる人がたくさんいて勇気づけられました。当時、日本語教室で教えてもいたんですが、生徒さんたちが
「Pray for Japan」ってたくさん寄せ書きをくれたんです。その後、一時帰国した際に両親が関わってる福祉施設で長いこと飾らせてもらっていました。気持ちを寄せて伝えてくれることのありがたさが身にしみました。

今回も遠くの出来事ではあっても、ご縁があってつながってるパトリシアさんから前向きな気持ちで伝えてくれる人々の暮らしぶり、サポートの姿があり、少しでもお伝えできればと思いました。
そこで何かを感じた娘の行動がシンプルで。こういう経験ひとつひとつが未来を作ってくれないかなーって思いました。娘はハート型の折り紙も作ったので、一緒に送ろうと思います!

正直、色んな角度で考えて頭こんがらがったりもしましたが、記事受け取ってくださってありがとうございます。

記事、ありがとうございます。

娘さん、オンラインでも、画面の向こうから何か感じられるところがあったのでしょうね。
今の情勢に関わらず
そうやって幼い頃から、いろんな国の人、いろんな立場の人に
単純に「新しい友だち」として出会う経験
すごく大切だなと感じました。

見習います♪

杉本さん

こちらこそ、読んでくださりありがとうございます!

そうなんです。わたしが誘導するでもなく、気がついたらペンをとって
いて。話聞いてる最中に「ねぇ、ママ!えばちゃんってどう書くの?」
って真剣に聞いてきて。行動が早かったです。あれこれ考えるでもなく。
子どもはすごい!

これから杉本さんもアブダビに行かれて、多国籍の方々と出会い、
なかには、思うこと、感じることも変化することもあるのかなって思いました。
わたしもそうでした^^ これから大きくなる息子さんと一緒に
色んな経験をされるのが羨ましく思います✨
きっと色んな国のお友達ができると思うので、親子で楽しんで
くださいね♪

うまく言葉に出来ないけど…
1人でも多くの人が笑ってくれたら嬉しいなと思いました。
それを山﨑さんの娘ちゃんが自然に行動にうつしてくれたこと。
思いを馳せること、大事ですね。

岸さん
コメントありがとうございます。
わたしもです!うまく言葉にできず…
出したり引っ込めたり。。
だけど、こんなことしか言えず…と
思わず、相変わらず平和を祈るところ
から始めたいです。それにしても
パトリシアさんたちが明るくて。
なぜかこちらが元気をもらいます!

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ABOUT US
山﨑恵
肝っ玉母ちゃんに憧れる繊細母ちゃん。アメリカで子育てをスタートさせるも、第二子出産後に産後うつになる。あの頃の自分にも、いま同じ思いをしている お母さんにも言ってあげたい。「いろいろあるけど、それでも大丈夫だよ」って。数年前、夫の実家の横須賀にあるカフェでお母さん業界新聞を手にとる。 配ってくれた人がいて、ここにたどり着いたご縁に感謝! このままの「お母さんであるわたし」でペンを持ち、人と社会とつながりたい。いまは地元埼玉県川口市で子育て・自分育ての根っこを下ろし中。 最近はまっているお灸でぽかぽかするのが至福の時。子ども/小6男、小3女