4月23日はキリスト教のイースター(復活祭)のお祝い。ウクライナ侵攻から2か月が経つなか、ルーマニアの北西部・クルージュに避難してきた子どもたちも、あたたかなお祝いで楽しい時間をもち、支援者らからの心こもったプレゼントに笑顔がこぼれた。
以前紹介したエヴァちゃん(4歳)は、いま幼稚園に通っているという。
エヴァちゃんが笑顔になってきたよ!
自らボランティア活動をしている日本アニメ好きのダーリアちゃん(14歳)は、「ここでの暮らしは気に入ってるよ」と教えてくれた。
だが、戦争が子どもたちの心にもたらした影響は大きい。
春は畑仕事の始まりの季節。クルージュでは、あちこちで野畑を焼いた煙が上がった。その煙を見て、どこかが爆撃を受けた後だと思い、パニックになった子がいる。
寄付品が集まる場所のおもちゃで遊んでいたら、そばで段ボールがドンッと床に落ちる音がして、何かの爆発音かと思い、泣き出してしまった子がいる。
毎晩、戦車の夢を見てしまう子もいる。
暮らしが整い始め、クルージュの学校や幼稚園に通うようになり、元気そうに遊んでいる子どもたちの心が抱えているものは大きい。そしてそれは始まったばかりだと知る。
これまで1000組以上に及ぶ避難家族を支援してきたクルージュのNGO団体
「Notorious Learning Project」(以下NLP)。避難家族の支援活動を始める前は、もともと異文化交流や若者への教育普及活動などを行ってきた。そのため、子どもたちとの関わりも多く、主要メンバーのなかにセラピストがいることもあり、いま、ウクライナの子どもたちの心のケアにも取り組んでいる。
心がけているのは、楽しくゆっくりできる時間。先日、より様々な活動ができるよう、NLPのサポートセンターを移設。日本からの支援も受けたサポートセンターの一室は、セラピールームになっている。そこでは、「いまどんな気持ち?」「何を思っている?」と問いかけるよりも、折り紙やぬり絵、音楽活動などのグループワークを行う。
子どもたちが遊び、安心して心をほぐせる関係づくりを大切にしている。
その活動のなかで、代表のパトリチア・クドウさんがいきいきと話してくれたことがある。
「街の学校や保護者たちに呼びかけて、各家庭の車庫で眠っていた自転車を借り始めたの。
Wheels power(タイヤの力)じゃなくて、Will power(意志の力)プロジェクトって呼んでます。いいアイディアを思いついたと嬉しくなりました!
乗り物は何でもよくて、ローラーブレード、キックボード、三輪車など子どもたちが喜んで遊べるものを借りて、無料で貸し出してます」
一家族に子どもの乗り物を貸し出し、使い終わったら、自分の手で別の家族へ。
乗り物遊びでたまった意志の力が次から次へとつながっていく。
青空の下で自転車を思いっきり漕ぐ爽快感!無心になって遊ぶ時間。
いま、子どもが子どもらしく遊べる時間がきっと力になってくれている。
この取材を始めてから、もし私が我が子と一緒に避難生活を送る立場だったら・・・と、時おり想像する。
繊細なところがあり、環境の変化に強くない我が子。コロナ禍が始まった頃、社会の異様な空気を察してか、しばらくの間夕方になると数年前に亡くなったひいおばあちゃんを思い出し、泣いてパニックになっていた。公園で友達と遊んでいても、空が曇ってどんよりしてくると、だんだん怖くなってくるのか、遊びを中断して帰ってきてしまうこともあった。
避難してきた子のなかには、きっと我が子のように繊細な子もいるだろう。想像力が豊かゆえに不安に思う子もいるだろう。写真に写る子どもたちの笑顔に心が明るくなりながらも、そんな思いをめぐらすと、胸がギュッとなる。お父さんに会いたい。仲間に会いたい。帰りたい。きっと色んな思いを抱え、今日も新しい環境で頑張っている。
「ママたちは自分のことを後回しにしがちだけど、子どもと同時にママたちの心のケアも大事。気丈に頑張っていても、夜に雷の音で手の震えが止まらないって話すママもいるの。子どもを預けている間に、いい香りのハンドクリームを一緒に作ったりして気分転換することを心がけてます」とパトリチアさん。子を守る母親の心もまた守られますように。
2人の子とお腹の子を抱えて避難し、間もなくルーマニアで出産するお母さんもいる。また、子ども4人を抱えるお母さんのマヤさんも「とにかく忙しくて、気落ちする余裕すらないわ」と笑うが、子どもたちの存在が彼女を支えているのだろう。
先の見えない戦い。高齢の避難者もいる。それまでの人生を一変し、こんなにも普通の人々の人生に影響を及ぼすのかと、たまらない気持ちが湧いてくる。
それでも、意志の力をつなぎ、今日も少しでも人々の笑顔が守られますように!と強く強く願う。
自転車を元気よく漕いで、進む、広がる、意志の力!
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NLPでは、避難者への生活援助、子どもたちの通学支援、移設したサポートセンターの修繕など長期間、多岐にわたるさらなる支援を必要としている。
「支援する人を支援する」一般社団法人WDRAC(戦災復興支援センター)では、パトリチアさんなど支援者のこれらの活動を支援し、寄付金の受付を開始している。各地で支援活動をしている人々の紹介や寄付の詳細はこちらから。https://wdrac.org
確かに、わが子の命を必死で守っているお母さんたちの心が
少しでも癒されるといいですね。
コメントありがとうございます。励みになります!
そうですね。子どもを守ることで精一杯のお母さんたちがまず元気でいられるように、心のケアにも着目していて、大切なことだなって心から思いました(^^)
これは避難してる方々のお話ですけど、自分たちの子育てにもつながる話やアイディアがあるなぁ、といつも気づきをもらっています。
どうか元気でいてほしいです。