お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

優しさのあるおうち〜ドブラ ハタ〜

「家にいるような感じがする。あぁ、ホッとするなぁ」

ルーマニアの北西部・クルージュに避難しているウクライナのお母さんたちは、NLP難民支援センターの存在をそう感じる人も多く、「Dobra Hata(ドブラ ハタ)」と呼ぶ。国の言葉で親切な、優しさのある家という意味だそうだ。

庭には、寄付で届いたトランポリンが置かれ、青空の下で子どもたちがはしゃぎ声をあげて遊ぶ。全身を使う発散遊びにとても良く、自然と心のケアにもなっているそうだ。

その間に、お母さんたちは寄付品の服や食材などを選びながら話をする。時には子どもに聞かれたくない話もあるだろう。そんな時、庭の砂場やトランポリン、乗り物のおもちゃで子どもたちが遊べる場所がある。時間がある。それがどれだけ尊いことだろう。

NGO団体のNLP(Notorious Learning Projects)は、より充実した活動ができるようにと、4月に新拠点に支援センターを移設。そこでは、ルーマニアのボランティアとウクライナの人々が一緒になって、床の修繕や庭の芝生敷き、部屋の壁塗りなどを行ってきた。

みんなで作り上げている場所。子どもたちは「まだ帰りたくない!」と言い、お母さんたちは「また明日来ます」と言う。ここに来て、一緒に手伝いをすることで、心の負担も和らぎ、笑顔になるお母さんも多いという。

ドブラ ハタ。優しいおうち。「とにかく暗くならないことを心がけています。楽しいこと、心が明るくなることを考え、毎日できることをしています」と代表のパトリチア・クドウさん。

数週間前からは、ウクライナのアンナさんが先生となり、毎週金曜日にズンバというリズミカルなダンスをみんなで踊っている。そのエネルギーは仲間とともに楽しみながら作り上げ、それが子どもへと循環している。

ドブラ ハタ。あったかいおうち。時には、1日に100組以上の避難家族が訪れることもある。戦災の情勢によっては、お母さんたちの顔が険しくなることもある。ウクライナに戻る人もいる。そのなかでも、庭に花を植え、先日あった「子どもを守る日」をにぎやかに祝い、ゆっくりお茶をするゆとりも忘れない。ゆとりは作りだすものだと教えられる。

「ここをウクライナの人たちだけの孤立した場所にしたくないんです。応援してくれているルーマニアの人も活用したり、一緒に過ごせる場所にしたいと思っています」

心のケアに取り組むセラピールームは、いずれルーマニアの人も使えるようにしたいという。夏には子どもたちが庭などで交流できる機会を設けたいという。

またセンターが持続的に活動できるような仕組みも考えている。例えば語学教室や、言葉の壁を越えてできるような仕事づくり。ウクライナの人たちがここにいる間、できるだけ自立できるようにとの思いだ。

さらに日本への留学経験もあるパトリチアさんは、センターの一角に日本文化ミュージアムを作り、地域の人が訪れやすい場所にしたいとアイディアも練っているようだ。

決して明るい話だけでは語れない避難生活。そして支援の日々。それでも「いい家」は地域に開かれていて、夢を持って、あたたかさがあるということが伝わってくる。未来に向けた取り組みは続いていく。

*この支援活動などを後押しする一般社団法人戦災復興支援センター「WDRAC」では、情報発信をしながら、寄付金も受付けている。https://wdrac.org/

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ルーマニアから届いたパトリチアさんの言葉が胸に広がっている。

「日々がとても充実しています。最も頻繁に話される願い・・・平和でありますように。私たちは誕生日に家庭料理を楽しみながら、携帯電話は爆弾警報を受け取ります。それでも私たちは繰り返すように言っています。『今を生きる』。ボランティアの皆さん、寄付してくれた方々への心からの感謝の気持ち。活動を続けるのに必要なエネルギーって他にあるでしょうか?」

遠く離れた場所からだが、元気でいてね!元気でいようね!そう気持ちを送っていたい。

注)写真はNLPより掲載、提供協力を頂いています。

6件のコメント

床の修繕や壁塗り!
まさに「とらんたん」と同じではないですか!

優しいおうち、あったかいおうち、
そして、孤立した場所ではない、開かれたおうち。

そういう場所があれば、みんな優しくなれる。

素晴らしい場所ですね✨

天野さん、ありがとうございます(^^)
そうなんです。
状況や国は違っても、ちょうど同じような
タイミングでの場所づくりですね!
天野さんが書いてくれたように、
訪れる人がホッとできる、優しくなれる
場所の存在って大事ですね。

国を離れざるを得なくなった人たちを
支えながらともに作っている場。
大切なことをみんなでやってるんだなって
思いながら書かせてもらいました。

「ドブラ ハタ」に来ている子たち。
想像するしかできませんが、
大変な思いがあるだろうけど、
そのなかでもパトリチアさんのような
人たちがいて、楽しくあったかい時間が
あったであろうことが
記憶のなかで少しでも残っていくといいな
なんて思いました。

その子たちが大きくなっていくこと
そのものが未来ですもんね!

天野さんがコメントしてくれたように、そう、私もまさしく『とらんたん』だ!
と思いました。

孤立が人々を飲み込まないように、孤独な人を生み出さないように、皆が集える場所があるんですね。いずれは国を超えて集える場所になりますように!

真紀さん、ありがとうございます(^^)
ちょうど真紀さんの記事を読ませてもらって、木材を担いでる写真を見て、
1ヶ月前に写真で見たパトリチアさんたちと同じだ!って思いました。

孤立が人々を飲み込まないように、皆んなが集える場所。
本当にそうですね!
安心して子育てができる環境づくりは、本当にありがたいと思います。

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ABOUT US
山﨑恵
肝っ玉母ちゃんに憧れる繊細母ちゃん。アメリカで子育てをスタートさせるも、第二子出産後に産後うつになる。あの頃の自分にも、いま同じ思いをしている お母さんにも言ってあげたい。「いろいろあるけど、それでも大丈夫だよ」って。数年前、夫の実家の横須賀にあるカフェでお母さん業界新聞を手にとる。 配ってくれた人がいて、ここにたどり着いたご縁に感謝! このままの「お母さんであるわたし」でペンを持ち、人と社会とつながりたい。いまは地元埼玉県川口市で子育て・自分育ての根っこを下ろし中。 最近はまっているお灸でぽかぽかするのが至福の時。子ども/小6男、小3女