お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

WARM HUG DAY(あたたかなハグの日)と娘のまっすぐな気持ち

「ママー!このお洋服、パトリチアさんのところに送ってくれる?」

ルーマニアの北西部クルージュにあるNGO団体のNotorious Learning Projects「ドブラ・ハタ センター(やさしさのあるおうち)」。そこでウクライナ難民支援をする代表のパトリチア・クドウさんが、9月のある日、支援物資の冬服が足りないと、SNSに投稿していた。

スマホをのぞいてきた8歳の娘にわかるように話をすると、「ちょっと待っててね!」と、慌てて2階に行き、小さくなった自分の冬服を集めてきた。

せっせと洋服をたたむ娘のまっすぐな気持ちが可愛くて、娘の許可を得て、写真を送った。こちらからは代わりに寄付金を送らせてもらった方がいいかと考えを巡らせていたら、

「温かい気持ちをありがとう!ボランティアのみんなも涙ぐんで感動しています」と返事をくれた。

そこから数日後。WARM HUG DAY(あたたかなハグの日)というイベントが開かれると知った。暖かい洋服を送る代わりに、感謝のハグをしあうというもの。いつも素敵なイベントを企画するなぁと思っていたところに、

「とてもいい日になりました!実はこのイベントのアイディアをくれたのはKちゃん(娘)。洋服を送ろうとしている姿が本当に優しくて。ありがとう!」との知らせ。なんと嬉しいことだろう。家族みんなで気持ちが温かくなった。まっすぐな気持ちは人を動かすのだと、娘に教えられた。

「こちらでは、冬の寒さや戦争のニュースばかりだから、『温かさ』『優しさ』をキーワードに、愛いっぱいの時間にしたかったの。資金不足のなかだけど、かかったのは、子どもたちへの風船と紙コップ、ジュース代の二千円分だけでしたよ!あとはみんなが協力してくれました」と微笑むパトリチアさん。

2月の侵攻開始直後に集まった寄付品のほか、呼びかけによりルーマニアの人々から次々と冬服が集まり、なかにはトラックに50箱も積んで運んでくれた友人もいたという。

避難してきた人のなかには、親子のほかに、高齢の方も多い。「みなさんが愛情をかけ合って元気でいること、それが私たちなりのファイト。暖かい服を着て、元気でいましょう!」と励ますと、涙するおばあさんがいたり、「心から感謝します」と勇気を出してハグをくれたおじいさんの姿も。200家族が訪れ、ウクライナにいる親戚分でも自由に洋服を受け取れたこの日は、タイトルの通り、温かさとハグでいっぱいの日になったという。

 

人が前を向いていられるのは、支え合いがあってこそ。想像してほしい。8ヶ月もの間、夫と離れ、精神的に辛くなっているお母さんもいることを。全ての決断を避難先で1人でしなければ行けない状況。職探しやルーマニアで生活するために必要な言葉の問題もある。

そういったものを前に、ドブラ・ハタセンターでは、心のセラピーや現地の幼稚園にウクライナの子どもたちのクラスを作ったり、安心して暮らせるような環境整備もしている。人々の声に耳を傾け、「いま、できること」に目を向けて。

侵攻から8ヶ月。先月、ロシアでは部分的動員も発令された。長引く戦いで様々なことが犠牲になっている人たちのどれだけ多いことか。「お互いの国に親戚がいる人もなかにはいます。これは、巻き込まれたみんながかわいそうなこと。戦争が終わるように、強く強く願いたいですね」とパトリチアさん。子どもたちには、こうやって明るい方へ、平和な方へと動いている大人もたくさんいるということを伝えていきたい。

 

後日、夫からの提案もあり、今回娘の気持ちを大切に冬服を送らせてもらおうかと検討し、パトリチアさんも喜んでくれたが、輸送の条件などで見送った。代わりに娘の手紙や季節の折り紙を送るとともに、寄付金という形で必要なことに役立ててもらえたらと思っている。

「Kちゃん、ありがとう!心のセラピーで折り紙もやるから、Kちゃんの折り紙が届いたら、飾りますね。きっといい雰囲気になります」。今も1日に217家族も避難してくる日もあるなか、子どもが子どもらしく過ごせるよう、季節のイベントも大切に用意しながら、今日も人々の生活を支えている。どうか知ってほしい。

**********

WDRAC(一般社団法人 戦災復興支援センター)では、パトリチアさんのような「支援する人」を支援するために、直接現地に役立てられる寄付金を募っている。これからが冬本番。人々の暮らしを支えるために。詳細はこちらをぜひ見てください。https://wdrac.org

コメントを残す

ABOUT US
山﨑恵
肝っ玉母ちゃんに憧れる繊細母ちゃん。アメリカで子育てをスタートさせるも、第二子出産後に産後うつになる。あの頃の自分にも、いま同じ思いをしている お母さんにも言ってあげたい。「いろいろあるけど、それでも大丈夫だよ」って。数年前、夫の実家の横須賀にあるカフェでお母さん業界新聞を手にとる。 配ってくれた人がいて、ここにたどり着いたご縁に感謝! このままの「お母さんであるわたし」でペンを持ち、人と社会とつながりたい。いまは地元埼玉県川口市で子育て・自分育ての根っこを下ろし中。 最近はまっているお灸でぽかぽかするのが至福の時。子ども/小6男、小3女