「町は学校プロジェクト(町学)」とは、不登校など、学校に行かない選択をしている子どもと
そのお母さんが、地域の企業へ体験学習に行き、親子で大切なことは何かを考え、学び合いをするプロジェクト。2023年4月~2024年3月、久留米市の2つの企業で実施し、親子8組が参加。想像以上の笑顔と学びの場となった。 (お母さん大学福岡支局長・池田彩)
一日のバイト代はアイスクリーム!
職場体験の初日。集合場所に着くなりソワソワし始めた息子。一旦中に入ったものの、一人で駐車場に戻ってしまったのです。慌てて追いかけると「お客さんに出す料理とかつくれん。怖い」と不安な様子。だが話しているうちに、行く気になってくれました。
体験が始まりました。ラップでおにぎりを包み、紙ナプキンを折り、砂糖の分量を量る…。すると不安顔は一変、みるみる明るくなりました。
初めて見る光景に驚き、「あんなにお砂糖を使うんだね。あれで飴をつくったらいっぱいできそう」「ごはんをつくるにはたくさんの準備がいるんだね」と、興奮しきり。
子どもたちはおしゃべりをしながらも、皆真剣に紙ナプキンを折る仕事に取り組んでいました。最後にバイト代としてアイスクリームをごちそうになって、うれしそう。
帰宅するなり、息子は出張中のパパに連絡し、楽しそうに報告していました。
最近の私は、学校を休みがちな彼のことが気がかりで、できていないところばかりに目がいってしまいがちでしたが、「がんばったよ!」と胸を張って報告する姿を見ていて、改めて「町学」への感謝の気持ちがわいてきました。(МJ/縄司真衣)
大量の砂糖に驚きつつ、お客様に出すものだからと真剣に量っていた
学校では体験できないものづくり体験
「明日で最後だよ」と声をかけた時、長男は一瞬フリーズ。それほど町学が大好きだった彼。終わりを迎えることが信じられない様子です。
読み書きに障害があり、その苦手意識から、授業ではノートもなかなかとれず、宿題は始まる前から大ブーイング。最終回の新聞づくりをどうするのかは心配でしたが、結果、「どうやって書こう…」と言いながら、まとめ作業に取り組む彼を見てびっくり。
「たくさんの配管を繋ぐと教えてもらった。いろいろな木の色があっていい匂いだった」と、エピソードを思い出しながら一人で書き進める姿に、涙が出そうになりました。町学の一つひとつが彼の血や肉になっていて、自分で伝えたいという強い意思も感じられました。
新聞づくりでは「木ってたのしい」とだけ書いていた彼でしたが、改めて大きな成長を感じました。
設計の回では「設計士になる!」、大工さんの回では「大工さんになる!」。今でも「お父さん、未来工房でお家をつくろうよ~」とねだるほど、未来工房の大ファンに。
私自身の木や家に対する意識も大きく変えてくれた「町学」です。 (МJ/福島早紀)
それぞれの個性ある設計図。互いに「いいね」と褒め合っていた
子どもにとって最高に居心地がいい空間
学校へ行ったり休んだりしていた息子がパタリと行かなくなりました。「今日学校どうする?」から一日がスタートするのに疲れた私が、尋ねなくなった途端、彼は学校へ行かなくなりました。
そんな時に町学Ⅱへのお誘いが。木登りが好きで、ツリーハウスをつくりたいと言う息子。家づくりがテーマならと参加表明したのです。
終わってみれば、未来工房の皆さんがワクワクする学びの種をいっぱい準備してくださり、子どもたちは次々にその種の芽を出し、花を咲かせていったように思えます。
最終日の朝。「書くのは苦手だよ」と先手を打ってきた息子。未来工房に入るやいなや、彼は居心地のいい部屋へこもってしまって出てきません。
私が諦めていると…。おや?ペンを持っているではありませんか! メンバーの一人が「そうすけ、何だったらできそう?」と聞いてくれて、「タイトルをなぞる役なら…」と、やり始めたようです。見習いたい、子どもたち同士のかけ合い。素晴らしいチームワークでした。(МJ/今立朱美子)
学校も学年も違う子どもたちが、回を重ねながら絆を深めていった
町学を通じて、出会えたこと
町学Ⅰ「おなか元気ぐるーぷ」での学びのテーマは、「心も体も元気にする菌ちゃんって何だろう?」。
微生物の働きや、いりこが脳の栄養に必要なこと、噛むことの大切さや、「いただきます」の意味などを教わった。また、生ごみを生かした農園にも行き、ニンジンの収穫や、飲食店での職場体験、ミネラルふりかけ「元気っこ」づくりなどを経験。食について改めて考える機会になった。
同代表の白仁田裕二さんはこう語る。「町学は今、時代が求めているものだと感じます。家庭と企業、そして行政、学校が一緒に人を育てる。そんな取り組みの中に私たちも関わらせてもらえることがありがたいです」。
生ごみたい肥について話す白仁田代表
町学Ⅱ「未来工房」での学びのテーマは、「家ってどうやってできるの?」。最初に本物と偽物の木の違いについて学習。木の棒でシャボン玉をつくり、木には空気の通り道があることを親子で体感。「設計士になってみよう」「大工さんになろう」と、職人さんたちからプロの技術や道具について教わり、家を建てるには、たくさんの人の力と知恵が必要なことを学んだ。
「子どもたちが、家づくりに興味を持って学んでくれたのはうれしかったし、お母さんたちの記事にも感動しました。20年後は彼らが、次の子どもたちに関わって町をつくってくれるはず」と、同代表の金原望さん。無垢の木の心地良さについて話す金原代表
体験学習の場では、興奮してハメをはずす子どもに冷や冷やもののお母さん。でもそれ以上に、感じたままを表現する子どもを見て、一緒に感動したり学んだり。学校に行く行かないを超え、働くことや生きることを親子で体感できたのは、町学ならではだ。
◉町は学校プロジェクトⅢを計画中。子どもたちの未来を共に考え、取り組んでくれる企業様を募集中です。
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