40歳で娘を産んだ。あれから8年。
子育てや仕事に悩みながらも、望む未来を実現するために、奮闘していた。
そんな中、乳がんが見つかった。ステージⅢCだった。
夫はショックで涙を流していたが、私は泣くことができずにいた。
娘(小2)が心配で仕方なかったのだ。
彼女の成長のすべてを目にできると信じていたことが覆り、切なく悔しく、さびしかった。
娘に、どう話したらいいのかも、わからなかった。
悩んだ末、包み隠さず話すことにした。
がんという病気になったこと。治療のため、活動に制限が出ること。
いつかは死ぬと思っていたが、遠い未来の話ではないかもしれないこと。
命が思っていたより早く終わるとしたら、教えないといけないことがたくさんあること。
娘と相談し、学校には黙っておくことにした。
自宅療養と入退院を繰り返す日々が始まった。
娘も、いつもと違う日常に慣れていくように見えた。
だが夏のはじめ、「担任の先生に話をしてほしい」と言ってきた。
秘密を持つことで孤独感を感じていたのだ。
涙を流して私の話を聞く先生を見て、先生の負担になるのでは、と心配していたことに気づいた。
その日から娘は、ふと心細くなったとき、先生に話しに行くことができるようになり、安心できるようになったそうだ。
私は娘に何か教えたり、何かから守らなければと躍起になっていた。
けれど、ただ彼女が心のまま安心して過ごすことを望んでいたのだと知った。
(高木朱理)
お母さん業界新聞ちっご版2019年10月号 1面 おっかしゃんリレーより
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