【パパスタイル 神山博紀/金沢市】
「自粛」「在宅」のワードが巷にあふれ始めた4月から、
石川県金沢市での単身赴任生活が始まった。
金沢は観光産業が強い土地柄、客足が遠のいた影響で街が活気を失うのも速かった。
初めて足を踏み入れた日は、
玄関口たる駅前ですらソーシャルディスタンスという言葉も不要なほど、
人気はまばらであった。
その静寂と相まって、
慣れ親しんだ街での4人家族の生活から一転、
知らない土地での単身生活が始まることに、無性にさびしさを感じたのを覚えている。
特にわが家の場合は女性ばかりの家族で、
家にいる限り誰かしらが何かしらをしゃべっているというにぎやかな環境のため、
1LDKのアパートに一人居ると、静寂をより強く感じたのであった。
しかし、数年は暮らす予定の金沢での時間も、
人生の大事な一時である(神様がくれたチャンス?)。
食道楽の性分も手伝い、
この地ならではの「食」を堪能しようと決意するのに、さほど時間は要らなかった。
金沢では普段使いレベルのスーパーでも、質の高い食材が手の届きやすい値段で並ぶ。
地物の新鮮な魚介類を見ているうちに、自分でさばいてみたいとの衝動に駆られる。
まずは出刃包丁を、とネットでポチリ。
気づけば刺身包丁やら鬼おろし用のおろし金やら、
単身赴任明けに自宅に持ち込めば、
置き場所がないと妻に叱られるであろう調理器具も増えた。
美食探求にも余念はない。
武者修行と称して、
コロナ禍のこの時期だからこそ予約できる人気店に潜入してみたりもしている。
夏休みには、家族を呼んで料理を振る舞いたい。
見違えるはずの腕前に、家族は感嘆の声を上げるだろうか。
いやその前に、クレジットカードの明細から、
武者修行の数々の浪費に、驚き呆れられるかもしれない。
2020年7月号全国版 パパスタイルより
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