お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

お母さんがステキと思える絵本とたくさん出会ってほしい/キッズいわき ぱふ代表 岩城敏之さん

えほんびと/キッズいわき ぱふ代表 岩城敏之さん
「お母さんがステキと思える絵本とたくさん出会ってほしい」

絵本やおもちゃをいっぱい車に詰め込んで
全国を飛び回っている岩城敏之さん。
お母さんや教育者たちに絵本や遊びの大切さを説きながら、
お母さんの素晴らしさを伝えている。
自らの絵本への思い、絵本の魅力、絵本のつきあい方などを聞いた。

みんなでよってたかって子育てをしよう
お母さんたち、はじめての子育てにドキドキだと思うけど、
一人で悩まずに困ったら人に聞く。
10人に1人くらい、「私にもできそう」と思える答えを言ってくれる。
子育ては母性ではなく「文化」。
母性と思うと自分を責めてしんどくなる。
未来の大切な人材を育てていることに誇りを持って、
しんどくなったら早目にヘルプを出し、周りの人に助けてもらおう。
お母さんは一人で子育てしない。
みんなでよってたかって子育てすることが大事だ。
子どもは命がけでお母さんを認知し、愛する。
ダメ親でええねん。
どの子も「このお母さんがええねん」と思っている。
子どもにとってお母さんは元気で笑顔でいるのが一番。
自分で自分を減点しない。
2歳の子なら、2歳の子なりの母でいい。
昨日できなかったことが今日できる、そんな目の前のわが子と
機嫌よく毎日を過ごし、生きてほしい。

絵本はおはなしが大事
日本では本がない時代も昔話でことばを伝えてきた。
昔話のほとんどが「じじばば」の話。
父母は野良仕事に忙しく、じじばばは子育てをし、
丸暗記したおはなしを聞かせる役だ。
日常を生きる中で大事なことを伝えてきた。
絵本はおはなしが大事。
ほんとに大事なものは目に見えないもの。
どの時代の価値観にも面白いと思われてきた昔話は
民族の文化や感性と関係している。
おはなしを楽しむ文化、紙芝居や映画、人形劇、演劇、
落語、浪曲、講談も同じで、その中の道具の一つが絵本。
「この本やあの本を与えないといけない」と思わなくていい。
いっぱいおはなしをしてあげて。

子どもの本という誤解
大学生のときボランティア仲間にかわいい絵本好きの女の子がいた。
自分はおもちゃ屋で育っているから、絵本というとガラガラ回る台に
入っている薄い本という認識しかなかった。
本は好きだったので、大人の女性ならもっと他に読むべき本が
あるだろうと思ったが、共通の話題が欲しかったので
地域の図書室で片っ端から絵本を読んだ。
時代は、絵本専門店が出始めた頃。
興味が広がり、レオ・レオニの『フレデリック』(好学社)に
出会って感動した。
経済学を学んでいて、『アリとキリギリス』のように怠けたらダメ。
真面目にコツコツと。と教育されてきたが、この絵本は真逆だった。
夏の間働かず自由にしていたフレデリックが最後、冬になって
元気がなくなるみんなを幸せにするというおはなしに出会い、
そこから絵本の世界を楽しむようになった。
『はっぴぃさん』(偕成社)や『正しいひまわりの育て方』
(ジー・シー・プレス)はよく見れば戦争のおはなし。
絵本の中の子どもたちは大人たちに向かって語りかけていることに
気づくと涙があふれてくる。
自分は子どもに対して、ちゃんと「大人」をしているのか、と
考えさせられた絵本。
コロナ禍で芸術活動が止まっているが、
人が人らしく生きるには、一見無駄そうに見えるものが大切で、
心を豊かにしていくものだと思う。

楽しい翻訳の仕事
大学卒業後、8年間勤めた書店の同僚が、お母さん、家庭文庫、
出版社の営業、編集とキャリアを積んで、児童書出版社の社長になった
(アスラン書房)。
絵本は感情を抑えて淡々と読むものと思われていたけれど、
『メチャクサ』という突拍子もない話を翻訳するなら
岩城さんのような人がいいと頼まれたのがきっかけだった。
海外の物語を楽しんで訳しているが、翻訳本は11冊にのぼった。

自分の心で感じて
絵本は子どものためにつくられてきたものではあるが、
一流の大人が思いや心を込めてつくったもの。
絵本には山ほどの学びがあり、影響力もある。
100人の作家が100の思いをカタチにしたものが絵本になり書店に並ぶ。
誰かが選ばなければずっとそこにあるままだが、
偶然その一冊を見い出せたあなたはかけがえのない出会いをしたことになる。
「この本ステキ」と思うことが素晴らしい。
データや流行に惑わされず、アドバイスはあくまで参考に。
自分の目で、心で、感じることが大事。

絵本の好みが違っても
「私の好きな絵本、よかったら聞いてもらえない?」まずお母さんが感じ、
気に入った絵本を子どもに紹介するような感じで読んであげる。
でも自分が好きな絵本でもわが子に喜ばれないこともあるし、
子どもが好きな絵本でもお母さんが好きじゃないこともある。
親子でもお互いを尊重し、共通点や接点を見つけることを楽しんでほしい。

美しいことばを話す
絵本を読むときは、作家の「美しいことば」をたどり
「美しい語り口調」になる。
ついさっきまで険しい顔で怒っていたお母さんも、
絵本を読めばがらっと変わるはずだ。
ことばがわからない赤ちゃんにもやさしい空気は伝わるし、
いい音やいいことばとともにいい周波数が流れ、
心も体もうれしくなる。
お母さんと一緒にいることが心地よく幸せと思える。
わらべうたのように「よしよし、だいじょうぶ」が伝わればいい。
絵本を読んであげることは、子どもに興味を注ぐこと。
「面白かった、もっと読んで」と言う子は自ら幸せな時間を
つくろうとしている。
次第に自分で探すようになるが、小さいうちはお母さんが
絵本との出会いを見つけてあげて。
そしてお母さんにも大切にできる絵本を見つけてほしい。


キッズいわき ぱふ
宇治市宇治妙薬31 TEL0774-21-2792
営業/木~日、祝日 11:00 ~ 16:00
※時短営業中

いわきとしゆき ● 1956 年生まれ。8 年間、書店
勤務。 絵本とヨーロッパの玩具を研究後、実家
のおもちゃ屋を継ぎ、1987 年「えほんとヨーロッ
パのおもちゃの店ぱふ」開業。子どもの遊びの
環境や、玩具・絵本について、保育園・幼稚園・
児童館などの職員研修や保護者向け講演の講師
として、全国を飛び回っている。翻訳本多数。

取材を終えて
小学校で1 年生を受け持っている娘が、
家にあった絵本を28 冊も教室に持っていっていて、
ボロボロになった絵本の写真が送られてきたんです。
そう岩城さんに話すと、
「娘さんが選んで持っていったのは、好きな本を子どもたちにも
見せたかったのか邪魔だったのか(笑)。
子どもたちが娘さんのお気に入りの絵本で楽しんでいるのは
素晴らしいし、絵本もたくさんの子どもたちに読んでもらって、
有意義な人生だ、本望だと喜んでいるはず」と。
なんだかとてもうれしかった。

お母さん業界新聞大阪版編集長
えほん箱プロジェクトリーダー
宇賀佐智子

(お母さん業界新聞 11月号 えほんびと)

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