円とサンタと、時々、靴下
木野武尊(豊中市)
アパート住まいのわが家には、
もうすぐ1歳になる息子の円(マル)と、
もうすぐ10歳になる柴犬のサンタがいます。
サンタは東京の義祖母の飼い犬でしたが、
祖母の体力と体調の問題で行き場を失っており、
2年前に大阪のわが家にやって来ました。
私たち夫婦はそれまで犬を飼ったことがなく、四苦八苦。
それから数か月後に円が生まれたので、
当時のわが家の状況は、それはそれは目まぐるしいものでした。
そんな円とサンタは「家族」ですが、
意思疎通は100点満点で言うと20点くらい。
円もサンタもしゃべれませんから当たり前なのですが…。
円はサンタに興味津々。
高速ハイハイで毎日追いかけ、耳をつかみ、
しっぼを鷲掴みにし、ママに諭され、時々撫でます。
そんなときサンタは耐えて耐えて、
少しだけ「ワフッ」と言い、ベランダに避難します。
しかしサンタにとっても悪いことばかりではなく、
円のいたずらで床にばら撒かれた「おやつ」を、
たびたびごちそうになっています。
そんな毎日がワーッと過ぎていく中、
私に新しいルーティーンが加わりました。
仕事から帰ると必ずママに
「今日は円とサンタどうだったの?」と聞くことです。
人間3人と犬1匹で生活する中で、
言葉を交わせるのは今のところ私たち夫婦しかいません。
今のわが家の状況で何も事件がない日はありませんから、
とにかく確認することが大切なのです。
「今日はついに円がベビーサークルから脱走したよ、
この高さではもう無理です」
「今日はサンタが散歩中に画びょうを踏んで病院に行ったよ、大変大変」…。
そんな「夫婦の申し送り」が済むと、
今日も脱ぎ捨てられた私の靴下を指差し、ママの一言
「洗濯機に入れやー」
「…御意」。
(お母さん業界新聞大阪版2021年5月号掲載)
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