映像プロデューサー・森谷雄さんの著書『母への100の質問状』(SB Creative刊)を読んだ。
自ら母へ、100の質問を投げかける。
質問1「母さん。僕が生まれる前のあなたのことを少し聞かせてください」、質問2「母さん。あなたはどんな青春を送り、そしてどんな恋をしていたのですか?」、質問3「母さん。僕が生まれるきっかけになった出会いのことを教えてください」…。
永遠と続く母への質問に、一つひとつ丁寧に返事を書く著者の母。そのやりとりの中にある、母と子の人生を垣間見ながら、心が揺れた。すべての人は母から生まれる。その母を想うことは、自分自身を想うことなのだと。
100個の質問は、記憶の中にある疑問を書き出したものだという。幼心に感じていたなぜ?を、ここぞとばかり著者は母へぶつけていく。
そこには、子どもを育てるために必死で働いて生きてきた女の半生が描かれ、胸を打つ。だが「質問」ではなく、「質問状」としたところに、著者の抱えてきたわだかまりと、母の後悔が表われているようにも思える。
先日久しぶりに、ふるさと(福岡県久留米市)を訪れた。運よく娘3人、孫3人を連れての旅になった。もう何年も皆で旅することがなかったので、「奇跡の旅」と命名。青い空を、広がる田園風景を、美しいイルミネーションを、共に見た。
さらに贅沢だったのは、世紀の天体ショー・皆既月食も一緒に観ることができた。娘や孫たちはあの月を見て、何を願ったのだろう。
同じ空間で感動を共有できたのはうれしかったが、一番は、娘たちと見た、孫たちの笑顔かもしれない。
そしてもう一人。あの日、空の上から笑顔の私を見つめる、亡き母の微笑みも。
祖母から母、母から娘、そして孫へとつながっていることを、深く感じることができた。
残念ながら、30年前に他界した母に、100の質問をすることはできないが、なおさら母へ、質問してみたくなった。答えのない、母の答えを想像するのもいい。
ふと、思う。もし私が、娘たちから1の質問をされたら、ちゃんと答えられるのか…ちょっと不安。まだまだ覚悟が足りない母の私。
『母への100の質問状』の最後の質問は…
「母さん。あなたは今、幸せですか?」。
はい。これならすぐに答えられる。「私は幸せです」と。もちろん、著者の母も、そう答えていた。
すべての母は、わが子の笑顔さえあれば、それでいい。それ以上に何があるものかと、教えてくれる一冊だ。
(藤本裕子)
母を「お母さん」ではなく、一人の人に認識した時、世界がとめどなく広がったことを思い出します。
1番の生きるモデルである母が歩んだ人生が、そうやって生きて大人になるのかと感じるものでありました。
私は将来、どんな質問をされるだろう。