お母さん大学は、“孤育て”をなくし、お母さんの笑顔をつなげています

〈特集〉お母さん、子どもを見送っていますか?


「キニナル業界数字」として、全国のお母さん(年齢不問)に行った「出かける子どものお見送りアンケート」。

数字は予想通りだったが、そこから先がすごかった。「出かける家族への見送りで思うことやエピソード、経験談などあれば教えてください」とした最後の質問に、なんと6割以上の人がコメントを寄せてくれた。

「1分でできる超簡単なアンケート」が売りだが、1分では終わらなかっただろうと想像できる熱いメッセージもたくさんあって、心を打たれた。そこで急遽、特集させていただくことにした。

【キニナルお母さん業界数字】
お母さんたちに聞いたアンケート結果は⁉

家々で交わされている「いってらっしゃい、気をつけて!」

「キニナルお母さん業界数字」として行った「出かける子どものお見送りアンケート」。

上のグラフでもご覧いただけるように、「子ども(または子どもとパパ)が出かける時、お見送りをしていますか?」の質問に対し、結果は予想通り、「はい」82.8%、「いいえ」17.2%と8割を超えるお母さんが、お見送りをしていることがわかった。

「いってらっしゃいやバイバイ以外に言う言葉(複数回答可)」では、「気をつけて」がダントツの8割超え。「いってらっしゃい」と「気をつけて」はセットで使うものと考えてもいいくらい。

「がんばって」「楽しんで」よりも、「○○持った?など持ち物の確認」をしている人が多く35.9%(95人)も。ついそんなことを言ってしまうのが母ゴコロというもので、まさに母の実態を表しているといえそうだ。

「言葉がけ以外にすること」としては、「特に何もしない」が約4割。「ハイタッチ」21.2%、「ハグ」17.4%以外にまとまった答えはないが、「その他」として、「背中をトントンする」「身体をタッチする」など、スキンシップを心がけている人もかなりいた。

「いいえ」と答えた55人には「お見送りをしない主な理由」を聞いたが、「子どもがさっさと出かけてしまうから」が18人、(働いていて)「自分が先に出てしまうから」16人が多く、「ゆとりがないから」13人、「めんどくさいから」5人と続いた。

 

簡単そうで難しい、笑顔で見送るということ

笑顔で見送ります

たくさんの「子どもを見送る」エピソードや思いのメッセージ、ありがとうございました。中でも一番多かったのは、お見送りをする理由のところ。年初に起きた震災のニュースにもあったように、「まさかのコト」を想像し、笑顔でお別れしておきたいという素直な気持ちでした。

自然災害ばかりではありません。交通事故を含む事件や事故なども想定してのこと。「いつ何が起こるかわからないので」「これが最後の別れかも」という言葉を多くの人が使っていたのがとても印象的でした。

「見送ります」の前には、「笑顔で」が必ず付きます。その前にある言葉は人それぞれ。「どんなに忙しくても」「ケンカをしていても」「反抗期で憎たらしくても」「イライラしていても」「全く…と思っても」「言いたい言葉を飲み込んで」と似たり寄ったりですが、浮き沈みのある母の心模様が映し出されていたのも興味深く思います。

子どもの無事と幸せを祈って

「いってらっしゃい」と笑顔で見送る時には、「今日も無事に帰ってきてね」という、究極の願いが込められています。「気をつけて」と発する人が多かったのも、これに尽きるでしょう。

また「気をつけてねはおまじないの言葉」という書き込みも複数ありました。

「園や学校で笑顔で過ごしてほしい」「今日もいい一日でありますように」。具体的には「お友だちと仲良く」とか「試験がんばるように」とか、さまざまな思いも込められているようです。「ハグでパワーを充電して送り出す」「ハイタッチで顔を見て送り出す」と書いた人もいました。

しっかり顔を見れば、お母さんにはわかります。何か嫌なことや不安なことがあるとか、反対にいろんなことがうまくいっていてとても充実しているのか…。離れて過ごす時間がハッピーでありますように。祈ることしかできないからこそ募る母の思い。

いってらっしゃい!に精一杯の願いを込めて

「いってらっしゃい」そう言って今朝も小3の長女を見送った。
いつもよりゆっくり丁寧に。長女が見えなくなるまで…。

昨日、トラックが小学生の集団下校に突っ込むという悲しいニュースが流れた。ご家族の気持ちを想うと、胸がぎゅっと苦しくなる。

「無事に学校に着いてね。そして元気よくただいま!って帰ってきてね」いつも以上に、そんな願いを込めて。

同じように見送ったお母さん、今日は多かったんじゃないかな?

長女をゆっくり見送って戻ると、髪の毛のセット途中で待たせていた次女がムスッと「遅いよー。手が疲れちゃったよ」と言った。

今日もみーんなが元気に過ごせますように。
「ただいま!」と帰ってきてね。そして、「おかえり!」と言わせてね。

(脇門比呂子2021.6.29)


いくつになっても、母の愛を伝えられる大切な瞬間

一日の大切な儀式

「一日を気持ちよくスタート」というワードも複数のコメントに出てきましたが、気持ちいいのは、子どもはもちろん、自身も含んでいる人が多かったように思います。

働いている、いないにかかわらず、忙しいお母さんたち。一日のタスクをスムーズにこなすには、かなりの部分でメンタルが左右するのです。特に、子どものことで心配や悩みがあったら、たちまち何もかもがうまくいかなくなってしまうのがお母さんの特性ですが、反対に、子どもに何事も問題がなく、子どもが笑顔でいてくれたら、お母さん自身もオールハッピーでいられるのです。

仕事で自分のほうが早く家を出るので「見送ってはいないが見送られている」お母さんの書き込みにありました。「いってらっしゃいの言葉に満たされる自分がいる」「子どもが笑顔で見送ってくれるから、仕事も家庭もがんばれる。本当にありがたい」と。

母は子の、子は母の幸せを願っています。朝のお見送りは、一日の大切な儀式なのかもしれません。

 

子どもの成長で変わってくる、お見送りの仕方

子どもの成長とともに

小さい頃はキスをしてハグをしてハイタッチをして出かけていった子も、大きくなってくると、「見送らなくていい」と言い出したり、「知らない間にさっさと家を出ていく」ようになったり。母としては複雑な思いはありますが、これも成長の証です。

「毎朝めんどくさそうにしながらハイタッチだけはしてくれる。今できる唯一のスキンシップです」「黙って出ていこうとするので、黙って出ていかれないように、玄関まで走っていって必死で見送っています」や、「絶対に振り向かないけど、背中で母の思いを感じてくれているはず」と、思春期の子どもを育てる母ならではのコメントもありました。

「上2人はさっさと行ってしまいますが、一番下の子だけは何度も何度も振り返って手を振ってくれます」なんて微笑ましいエピソードも。

もともとシャイな性格だったり、時間にルーズだったりして、「お見送り」を二の次にしている家庭もあるようですが、どこかできっと母の愛は伝わっていると思うしかありません。

中には、「子どもに何もしてあげられないので、せめて朝のお見送りだけは」と。自分が亡くなってから、子どもが親になった時など、ずっと先の未来に「毎朝お見送りをしてもらっていたという記憶を残したい」といった内容のコメントも多くありました。

一瞬上げそうになったけれど下ろした手

長女(中2)が学校へ行く様子を後ろから見ながら、「いってらっしゃ〜い」と手を振った。
こっちを振り返り、一瞬上げそうになったけれど、キュッと下げた手。

その様子を見て、思春期ならではの娘の意地を感じて、なんだか笑ってしまった。

私もあったな。これも大事な成長の過程。

(池田彩2020.10.27)

 

お見送り文化を、親から子へ、子から孫へ

親がしてくれていた

「両親が今も孫(子ども)を見送ってくれている」「母にしてもらったように私も子どもにしています」「見送るのが当たり前の家に育ちました」と、親のことを書いたコメントも相当数ありました。

「アンケートにびっくり。見送らない人がいるんですね?」と書いた人もいましたが、お見送りが、母から子へ伝承されているものということが明らかになりました。

「いろいろ夫への不満はありますが、毎朝玄関で子どもたちの姿が見えなくなるまで手を振ってくれる。これだけでほかは帳消しにしている」というコメントの続き。「夫の実家に行くと、同じように義父母が曲がり角までずっと手を振ってくれるので、きっとそうやって育ってきたのでしょう」とありました。

「そういえば、いってらっしゃいのパパとのチューは、いつからしなくなったのでしょう。アンケートをしながらふと思いました」のコメントには、ちょっと笑えました。

笑顔で送り出したいのにモヤモヤする母ゴコロ

 長男を送り出す朝、モタモタしてなかなか準備できない姿にお小言を言ってしまった。

「まったくもう、なんでそんなに鈍臭いの!」うるさいなあ、と言わんばかりの長男の顔。お互いにモヤモヤした気持ちで、「いってらっしゃい」「いってきます」。

…はあ、朝は気持ちよく送り出したいのにな。長男が帰ってくるのは15時過ぎだから、7時間近く会えない。

だからこそ、笑顔で送り出したいのに、ブツブツお小言を言ってしまう自分が情けない。

(天野智子2021.3.15)

 

アンケートをきっかけに

「息子に、ケータイ持った? ○時に帰ってきてよ! ちゃんと連絡して!などしつこく声かけするので、毎回うるせーな! わかってる!とだるそうに出ていきます」というお母さん、これからはもう少しさっぱりとしたお見送りができるでしょうか。

それとも「うるせーな!」と言われつつ、それが母流のお見送りとして、しっかり受け継がれていくのかもしれませんね。

「忙しかったり、仕事で疲れていたりして、お見送りをおろそかにしていたことを反省しました。本当に、今日で最後かもしれないという気持ちで見送ろうと思います」…こんなお母さんが1人でも増えたらいいなと思います。

いつか子どもは親から離れていきます。忙しい毎日の中で、面倒で大変なお見送りですが、母ならではの醍醐味もいっぱい。そう思ったら、笑顔で子どもを見送れる今に感謝し、今日も元気に「いってらっしゃい!」と声をかけたくなりますね。  (編集部)

 

何千回ものいってらっしゃい

 私はできるだけ家族に「いってらっしゃい」を言う。今朝も6時、長男に「いってらっしゃい」、7時半、次男に「いってらっしゃい」と見送った瞬間、どどどと頭の中に流れ込むものがあった。それは今までの、夫や息子のたくさんの「いってきます」の姿だった。

私はこれまでに何回みんなに「いってらっしゃい」を言ってきたのだろう。

考えたくはないけれど、出かけてもしやということがあるかもしれない。なので、ケンカで腹を立て、憂鬱な朝であったとしても、彼らが出かける時には必ず「いってらっしゃい」と言う。

写真は元日の朝5時。次男が「お台場まで行ってくる。日の出を見たら帰ってくる」と出かけて行った時にパチリ。

(尾形智子2023.3.1)

アンケートから(一部抜粋)
~お母さんあるあるに、反省したりほっとしたり~

・母は私に「気をつけてね」と言っていて、子どもの時は「ただ学校行くだけで何もあるわけないのに」と思っていた。でも自分が母になると、不審者がいるかもしれないし、事故にも遭ってほしくないし、「気をつけてね」と心から思う。

・子どもたちが大きくなり、いつの間にか出かけていたりとお見送りも少なくなってきました。だからこそ小4の娘が出かける時には必ず玄関でお見送りしたいと思っています。Have a good time が「ハンバーグタイム」に聞こえるねーなんて話した日から、ハンバーグタイムって言っています。

・土曜日に私が仕事で出かける時は、家族が笑顔で見送ってくれます。それだけでがんばれます。だから、私も朝はバタバタしがちですが、笑顔を忘れずに見送るように意識しています。

・息子にはついガミガミ。しかしそうして送り出す一日はもう戻らない一日。そう思ったら、どんな言葉で声かけするかが大事。怒ったさっきをちょっと脇において「いってらっしゃい」と笑顔で送り出すようになってきた最近です。

・不登校中の娘の足取りや声色で、今日の調子を推し量ります。でも「いってらっしゃい」と送ってしまえば、あとは彼女の歩く道。親は帰ってきた娘がホッとする空間を準備して待つのみ。どんな顔で帰ってきても、あたたかく迎えよう。いってらっしゃいは、誓いの時でもあります。

・一瞬一瞬を味わって後悔のないように、楽しく生きたい。そして、お母さんは忙しくても、毎日笑顔で見送ってくれたという記憶が、子どもたちの力になると信じています。

・朝の見送りで、つい気になったことをあれこれ注意してしまい、半泣きで学校へ行かせてしまったことが。今じゃなかったと反省するも、定期的に同じことを繰り返してしまいます。

 

“お見送り”という、当たり前で尊い儀式

いかがでしたか、今特集?

「いってらっしゃい、気をつけて!」と
子どもの無事や幸せを願ってお見送りをしているお母さん。

たかが、お見送り。されど、お見送り。
それは、当たり前だけれど、とても尊いものだと思えます。

アンケートにご協力くださった皆さん、ありがとうございました。
お母さん業界新聞では、毎月さまざまなテーマで、お母さんの日常や生態に迫り、研究しています。

キニナル業界数字アンケートは、お母さんなら誰でも参加できますので、
ご興味のある方は、ぜひ次回からアンケートに参加してください。

 

エキストラという名優になりたい!

中3になる孫のたっくんは、サッカーと勉強で忙しい。

ある日LINEで「今、何かしたいことある?」と他愛もない質問をした。「べつに…」そんな返事を想定していたが、答えは意外だった。

「海外に行きたい!」あの怖がりたっくんが海外へ⁉ その世界へ一歩踏み出させてあげたいと余計な質問をした私。

「海外ってどこ?」すぐさま「ヨーロッパ」と返事が。たっくんが外の世界に目を向けたことを知って、ほくそ笑む私。「よし、行こう!」と送ったメッセージに、たっくんからの返事はなかった。

たっくんには私と一緒に海外へ行くというシナリオはないと気づき、あ~、夢を邪魔してしまったと後悔。最後の一言で余計なNGシーンを。

エキストラは、主演を食っても邪魔してもいけない。寂しいようなうれしいような、悔しいような、老婆の乙女ゴコロ。

たっくん家にお泊りした翌朝、朝練のために家を出るたっくん。私はたっくんを見送るために外に出た。勇ましいたっくんの後ろ姿。いつの間にこんなに大きくなったのだろう。

たっくんは遠くの曲がり角で振り向いて、私に小さく手を振った。ずっと私が見ていることをちゃんと意識していてくれたのか。やさしい、たっくん。

この先たっくんが、どんな世界へ行こうと、私はこうしていつも遠くからあなたを見つめ、名エキストラを務めるよ。主役が最高の人生の舞台を演じられるように。

(藤本裕子2020.3.28)